オフィスの置き野菜というユニークな業態を2014年にスタートさせ、利用企業累計700社超というところまで事業を拡大してきたOFFICE DE YASAIだが、道のりは平たんではなかった。

 二浪で東京理科大学に入った社長の川岸氏は卒業後、製造業向けの日系コンサルティングファームに就職。この頃は、起業家志向はなかったという。「二浪なので中高時代の友人たちは先に社会に出ていました。友人たちに追いつくために、コンサルティングファームのような所に行けば、自分の成長が早まるのではと思っていました」。会社に入ってみると、ものづくりを広く捉えて、農業向けのコンサルティングの研究がなされていた。だが農家の実態を考えると、そこからコンサルティングフィーをいただくのは難しそうに思えた。「ならば農業のためになるようなサービスを、自分たちで起業すればいいのではと考えるようになりました」(川岸氏)。こうして2012年、KOMPEITOを設立した。川岸氏が30歳のときだ。

 「農業界を変えていく」を掲げる同社は当初、野菜の宅配事業を手がけた。だが先行する競合もおり、この業態で自分たちの特色を打ち出していくことはなかなか難しかった。知り合いに買ってもらったら、あとは全く売れないということもあったという。「宅配のコストが大きなネックでした。1000円ちょっと野菜を購入してもらっても、宅配料金は同じかそれ以上かかってしまいます」(川岸氏)

 宅配コストを下げるため、オフィスで社員から野菜の注文を取りまとめ、そこにまとめて届けるようなことはできないだろうか。そう考えて企業にヒアリングしてみると、違った反応が返ってきた。「丸のまま調理したり、持ち帰ったりは面倒だ。社員の健康増進のため、職場ですぐ食べられるようにカットした野菜を提供できないかという声があったのです」と川岸氏。こうして2014年、OFFICE DE YASAIは誕生した。

「OFFICE DE YASAIを導入することで、会社は従業員の健康に気遣っていますというメッセージを、目に見える形で発信できます」と、川岸氏は企業側のメリットを強調する。近年、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践しようとする「健康経営」という考え方が注目を集めている。OFFICE DE YASAIは低コストですぐ取りかかれる、健康経営の具体策といえるだろう。オフィスで働く皆さんも「本当に社員の健康が大事だと思っているのなら、OFFICE DE YASAIの導入を」と、会社に働きかけてみてはどうだろうか。(五嶋正風)

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