これまでの森友学園疑惑をめぐる国会での議論は、改竄された公文書をもとに行われていたことになる。国家の行く末に関わる国会審議の時間を、政府は自分たちの都合のいいように「印象操作」するための芝居に費やしていたのだ。

 その上、政府は今回の問題を真摯に受け止めているようには思えない。監督責任があるはずの麻生財務大臣は、記者会見でも全く反省している様子を見せない。それどころか、佐川宣寿前国税庁長官をはじめとする一部の財務省職員に責任をなすりつけるのに必死だ。

 安倍首相も、2017年2月17日に、「私や妻が関係していたということになればこれはまさに私は間違いなく総理大臣も国会議員も辞めるということははっきりと申し上げておきたい。」と明言していたのにもかかわらず、安倍昭恵氏の名前が公文書から消えていたことが発覚しても、あくまで無関係だという姿勢を貫いている。

 仕事などの日常生活においても、上から無理難題を押し付けられることがあるだろう。その上、問題が発覚したら、責任をすべてなすりつけられたらどうだろうか。ごく普通に考えれば、そんなことが、まかり通っていいはずがない。しかし政府は、自分たちの持てる力を使って、それをやろうとしている。

 最近の首相官邸前の抗議で、特に盛り上がるコールは、「官僚がんばれ!」や「総辞職!」だ。これらのコールには、官僚は上からの圧力に負けないで、「国民全体の奉仕者」としての自らの仕事に徹してほしい、そして政治の側がきちんと責任をとるべきだ、という思いが込められていると思う。政府にはその声を受け止めて、包み隠さずに真相を明らかにし、その上できちんと責任を果たしてもらいたい。佐川氏を証人喚問して、財務省に責任を押し付けて終わりなんてことは、絶対に許されない。

 今後も23日と、30日の金曜日の夜には、大規模な首相官邸前抗議が予定されている。また聞き及ぶ限り、土日にも抗議の場が作られる予定だ。今回の問題の真相が明らかにされるかどうか、またしかるべき人間が責任をとるかどうかは、私たちの声にかかっているように思う。今、私たち自身の力が問われている。(文/諏訪原健)

暮らしとモノ班 for promotion
2024年の『このミス』大賞作品は?あの映像化人気シリーズも受賞作品って知ってた?