




「はい、どうぞ。お気に入りのイケメンを探してね」
かつては日本有数の鉱山として知られた、兵庫県朝来市の生野銀山。2017年9月下旬、公開されている観光坑道に入ろうとすると、入り口で男性スタッフから「GINZAN BOYZ(ギンザンボーイズ) 全メンバープロフィール資料」を渡された。
きょろきょろしながら坑道の入り口を目指すと、右手に資料の最初に載っていた次郎羅茂(じろうらも)を発見。山に向かって、真剣な表情でつちを振るっている。そしてそのまま、全く動かない……。そう、彼らは、メンバー全員がマネキンという、超スーパー地下アイドルなのだ。
入り口で手渡された資料にある顔写真やプロフィールを見ると、「No.1次郎羅茂(じろうらも):空と太陽を愛する、イタリア系フェイスの堀大工。(中略) 常にフォトジェニックなポーズを意識している」とある。そして英語の筆記体で「girolamo」のサインが。ちなみに「i」の点は、ハートマークだ。
プロフィールは、鉱山(ヤマ)の世界観が感じられる長いものから、「No.46 しずかちゃん 無口。」とほのかにやっつけ感が漂う短いものまでさまざまで、サインは多彩だ。女性も入れて60人(体)分あり、それぞれのキャラクターに応じた内容は、考えた人たちの執念すら感じさせる。
坑道出口上の岩場には、「No.47 甚八(じんぱち)」「No.48 鈴丸(すずまる)」「No.49 杢太郎(もくたろう)」がいた。資料によると、鈴丸は、手にした丸太を使ったエクササイズを考案しているらしい。もはや意味がわからないが、どんなエクササイズなのか、ものすごく気になる。そこも狙いなのだろうか。
平均温度13度のひんやりとした坑道内のあちこちや、外にある資料館でも、次々とメンバーに出くわした。メンバーたちは、暗がりで、体を張って在りし日の鉱山での仕事を伝えている。
外の売店では、メンバーのサイン入りブロマイド(1枚税込み200円)やTシャツ(同1500円)を販売。写真撮影コーナーもあり、無類のゴシップ好きでリサーチ力は某週刊誌並みという「No.40 よさぶろう」をはじめとしたメンバーと写真を撮ることができる。地元の60代の夫妻が、孫で小学4年の男の子と、うれしそうに写真に納まっていた。手には、アイドルグループの応援には欠かせないであろう、ギラッギラに彩られたうちわを持っている。銀山のスタッフの手作りだそうだ。
「孫がよくギンザンボーイズのことを話しているので、いっぺんどんなものかと見に来ました。地元の小学校の運動会に来たのも見たけど、すごいな……」。男性は、戸惑いながらも笑顔で話した。
ギンザンボーイズは、依頼されれば出張もする。この小学校の運動会にはよさぶろうが出向いた。銀山のスタッフによると、みこしの上、カバーの中からよさぶろうが姿を現した瞬間、子どもたちから「わーっ」と歓声が上がったという。よさぶろうは子どもたちとフォークダンスにも興じたそうだ。