2015年3月21日午前7時半に、大勢の人や大漁旗に迎えられる形で宮城県女川町にある女川駅のホームに一本の列車が到着した。4年前、東日本大震災で被害を受けたJR石巻線(44.7キロ)のうちの最後の一区間となる浦宿(うらしゅく)―女川間2.3キロが遂に再開した。女川駅再開を皮切りに「まちびらき」と銘打ち、女川町が新たな一歩を踏み出した。
11年3月の震災で、駅や役場を含む女川町の中心部は約15メートルの津波に襲われ、約9割の家屋が被害を受けた。地域の人々の足であった石巻線は全線不通となった。その後、JR東日本は石巻線の復旧に努め、11年4月には一部区間で運行を再開。さらに、13年3月までには、宮城県美里町にある小牛田(こごた)から女川町の浦宿(うらしゅく)までの区間が再開されており、今回の女川駅までの復旧で全線が再開した。
石巻線の全線復旧にあたっては、収益性も確保する必要があり、集客力のある施設が欲しいというJR東日本の意向もあったため、元々女川駅の横にあった「ゆぽっぽ」という町営の温泉温浴施設と駅舎を合築して再開するという形になった。
新駅舎の設計は、高台にある仮設住宅を設計した建築家の坂茂氏。継続的に女川町の復興をサポートしたいと手掛けたものだ。目を引くその姿はウミネコがはばたく様子がイメージされており、港町女川を象徴するものとなっている。また、新駅舎は以前より200メートル内陸側へ移動し、そのうえで土地も7~9メートルかさ上げされた場所に建設された。
「この施設を建設するにあたっては、復興予算ではなく、町の財源を使って、町の想いとして作ったんです。」と女川町の須田善明町長は話す。さらに、「この『まちびらき』を皮切りに、女川の人だけじゃなくて石巻圏域の人にも日常的に使ってもらえるまちにするか、そういう空間をどのようにここに創っていくか。それが、女川がこれからずっと生きていけるかの分岐点だと思うんですよね。女川のまちづくりの良いところは、飲み食いできるお店、自由に活動ができる場所、公共機能、のんびり過ごせる場所など、全てがワンパッケージなんです。そこから賑わいと活力を生み出し、維持をする。きっかけになるものがあって、それを使う使わないも含めて、自由に楽しんでもらえる場所に皆でしていきたいですね。」と同町長。
今回の女川駅再開・石巻線全線開通を皮切りに、月末には「地域内外の交流施設」を目指すフューチャーセンター、来年にかけてはテナント型商店街などがオープンし、まちは更にひらかれていく予定だ。
(ライター・加納実久)