「アイアンマン」や「超人ハルク」、「雷神ソー」、「キャプテン・アメリカ」など、アメリカンコミックの人気キャラクターが一堂に会して大ヒットとなった映画『アベンジャーズ』。その続編に、やはりアメリカンコミックの人気キャラクターにして、映画シリーズもヒットしている「スパイダーマン」が参入することが決定し、話題となっている。

 アメリカンコミックの場合、出版社が同じなら、本来別の作品でもその作品内世界を共有する、というルールが伝統的にある。そのルールを映画に持ち込んだのが、映画版の『アベンジャーズ』シリーズというわけだ。こうした異なる作品やキャラクターが共演するのは、「クロスオーバー」と呼ばれる手法。アベンジャーズやスパイダーマンの権利元の大手出版社マーベル・コミックスに対抗して、現在はライバル出版社のDCコミックスも「スーパーマン」と「バットマン」のクロスオーバー映画を製作中だ。それぞれファンを取り込んで“夢の共演”を楽しませてくれるのは、アメリカンコミックの伝統ともいえる。

 ところで、こうした「クロスオーバー作品」は、日本にも数多く存在している。1973年の『マジンガーZ対デビルマン』を皮切りに、テレビ番組の映画版やVシネマ版などにおいて、クロスオーバー作品が多数製作されており、最近では『ルパン三世VS名探偵コナン』や、歴代の仮面ライダーと歴代のスーパー戦隊が共演する『スーパーヒーロー大戦』まで、枚挙にいとまがない。

 もっとも上記作品群は、原作者、あるいは製作会社が同じだからこそ可能なクロスオーバー。ファンの多くが待ち望みながらも、権利の壁がありクロスオーバーはできない組みあわせもある。例えば「巨大怪獣映画」という同じジャンルながら、ゴジラとガメラの共演作は存在しない。これは双方が異なる映画会社の看板怪獣であるためだ。

 とはいえ、製作会社の異なる看板キャラクターが共演した作品も。オリジナルビデオとして発表された『ウルトラマンVS仮面ライダー』がそれだ。日本を代表する二大ヒーローシリーズの、まさにこれこそ“夢の共演”だったが、しかし御存知の通り、ウルトラマンは巨大、仮面ライダーは等身大。どのように共演するのかと思いきや、クライマックスで仮面ライダーが巨大化してウルトラマンと共闘するという、ファンからすると、なんだかモヤモヤする作品であった。

 このように、“夢の共演”は両者の設定を付き合わせると矛盾が発生する可能性が高い。ヒーローが複数いるなら「なぜ普段から共闘しないの?」とか、お互いあんなに目立つ活動しているのに「どうして相手のこと知らないの?」 など、誰もがツッコミを入れたくなってしまうものだろう。

 しかし、クロスオーバーは本来ならありえない別世界のキャラクター同士が共演してしまう、いわば非日常の祭りのようなもの。数々の矛盾点には目をつむり、キャラクターたちの夢の共演を楽しむのが、健全な見方というものだ。もっとも、当初からクロスオーバーを前提として作られている『アベンジャーズ』シリーズに限っては、「特別編だから矛盾は許して」とは言い難い気もするが。

(ライター・田中元)