お湯を注ぐだけですぐ飲める即席飲料、インスタントコーヒー。手軽さはあるがレギュラーコーヒーに比べ、味や香りが劣るとされてきた。しかし、今、そうした「常識」を覆す商品が話題となっている。
今年8月23日に発売されたAGF(味の素ゼネラルフーヅ株式会社)が発売した「〈マキシム〉トップグレード ハイブリッド」は、インスタントコーヒーでありながら、本格的なレギュラーコーヒーの味・香りが楽しめる。インスタントとレギュラー、いずれの長所も兼ね備えているが故に「ハイブリッドコーヒー」というネーミングがつけられたという。
とはいえ、世の中のインスタントコーヒーは「レギュラーコーヒー並みの本格派」を宣伝文句にしてきた過去がある。そもそも近年、コーヒー文化も成熟度を増し、豆の産地や焙煎方法にこだわる消費者も少なくない。そんな舌の肥えた消費者を満足させるだけの商品なのだろうか。
まずは豆。2種類の味わいが楽しめるが、ひとつはグアテマラ産の最上級グレード豆SHB(標高1350m以上で栽培された最上級品質の豆)、もうひとつはタンザニア産最上級グレード豆AA(粒の大きさが最も大粒の最上級品質の豆)を使用している。たしかにスペックは高そうだが……。
同商品の開発秘話について、同社IC・RC事業部ICグループ統轄マネージャーの菅原若菜さんはこう語る。
「豆の質だけでなく量にもこだわっています。公正競争規約では特定産地の豆が 30%以上ブレンドされていなければ『○○ブレンド』と名乗れませんが、本商品はそれを大きく上回る割合で贅沢に最上級グレード豆を使用しています。これだけ上質な豆をたくさん使うわけですから、正直、供給面でもかなり苦労はあります」
そんな上質な豆をふんだんに使ったオリジナルブレンドを焙煎し、コーヒー抽出液を作り出す。普通のインスタントコーヒーならその抽出液を乾燥(粉末化)させて終りだが、この商品は抽出液にゴマの約40分の1程度に細かく砕いた最上級グレード豆そのものを練り込むのだという。この、今までのインスタントコーヒーではあり得なかった「ひと手間」がレギュラーコーヒー並みの深い香りと味わいを実現させているのだとか。
「練り込む豆を粉砕する行程は、豆の香りをそのまま閉じ込めるため超低温の環境下で行われております。いくら良い豆を使っても、素材を生かせなければ宝の持ち腐れ。とにかく香りにはこだわっています。ただ、弊社の常識を捨てて挑んだ商品開発でもあったのでいろいろと苦労はありました。弊社の場合、インスタントコーヒーを作って40年。その中で培ったノウハウもあり、いい面もあるのですが、悪く言うと慣習にとらわれすぎていて新しい物を作り出しにくい側面もありました。そこで、今まで常識とされていた製造工程を一部見直しました。たとえばコーヒーの抽出液を乾燥させる工程。詳しくは明かせないのですが、何十年と変更してこなかったある設定を変更しました。弊社としては、かなり画期的な事件です。なにせそれまでベストだと思い込んでいたものよりも、より最適な発見をしたわけですから」
40年、インスタントコーヒーを作り続けて来た同社の常識を覆し、新たなチャレンジの末生まれたハイブリッドコーヒー。その実力が消費者に受け入れられるかどうか、注目したい。
【関連リンク】
〈マキシム〉トップグレード ハイブリッドに関するページ(AGF)
http://www.agf.co.jp/hybrid/