聖火がともるランタン(C)朝日新聞社
聖火がともるランタン(C)朝日新聞社
IOCのバッハ会長=2020年1月(C)朝日新聞社
IOCのバッハ会長=2020年1月(C)朝日新聞社

 コロナウイルスの感染拡大を受け、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長と安倍晋三首相が3月24日、電話会談し、今夏に開幕予定だった東京五輪を1年程度延期することで合意した。遅くても来年夏までに開催する。大会名称は従来通り「東京2020」。26日に始まる予定だった聖火リレーはすべての行事を取りやめる。

 日本側は、大会組織委員会の森喜朗会長と武藤敏郎事務総長、橋本聖子五輪相、東京都の小池百合子知事も同席。安倍首相が「おおむね1年程度の延期」を提案し、バッハ会長が「100%同意する」と答えた。詳細な日程については、今後決めていくという。森会長は「(開催時期は)おおむね夏。これからのこと(調整)」と話した。

 すでに販売されたチケットや、採用された大会ボランティアについてはどうなるのか。武藤事務総長は「方針としては、できるだけ、すでに入手された方、ボランティアの資格を取られた方に十分配慮していきたい。同じ競技が行われるが、日付が違うことで(チケット購入者に)いろいろ事情があるかもしれない。決してご迷惑をかけない対応を考えたい」などと話した。

 中止になった聖火リレーは、今後新たに日程を組み直す。森会長は「首相から(聖火は)福島に置いてあげたらいいのでは、と。しばらくは福島に置くことになるのでしょう」と明かした。武藤事務総長は「当面の聖火リレーは白紙になった。期日が決まれば、同じように再開する。今のランナーの方々に優先的にリレーができるように配慮していきたい」と話した。

 会場・施設の確保や、維持費など経費がかさむことも心配されている。武藤事務総長は「すでに予約が入っている施設もかなりあると思われる。(費用については)全く数字を持ち合わせていない。その数字をだれが負担するかは、これからの検討事項だと思う」と語った。

 また、橋本五輪相は「1年延期が決定したことに選手も安心したのでは。会場の問題、経費の問題、たくさんのことを同時にしていかないといけない」と述べた。

 実は、1年延期に向けて道筋は出来ていた。21日、五輪に大きな影響力を持つ米国のトランプ米大統領が「来年まで延期されるかもしれない」と発言。22日には米紙ウォールストリート・ジャーナルが、IOCに巨額の放映権料を支払う米テレビ局NBCが1年延期に向けて動いていると報じた。23日には米紙USAトゥデーのインタビューで、IOCのパウンド委員(カナダ)が「2021年に延期されるだろう」と語った。

 各国五輪委員会も相次いで1年延期を求めた。カナダやオーストラリアが要請したほか、ドイツ五輪委会長も「少なくても1年の延期」を要求した。ロシア・オリンピック委員会(ROC)のジューコフ名誉会長も1年延期が妥当とした。

 21年は7、8月に水泳と陸上の世界選手権がある。だが、五輪メダル候補を多数そろえ、世界の水泳界に影響力を持つ米国水泳連盟が五輪の1年延期を要望。世界陸上連盟も1年延期に向けて日程の変更に入った。

 1年延期の場合、すでに五輪代表に内定した選手を、そのままスライドさせることも可能だ。ただ、コロナウイルス感染拡大が完全に終息するかどうかはわからない。

 一方、2年延期は、22年の北京冬季五輪やサッカー・ワールドカップ(カタール)と日程が重ならないものの、選手選考をやり直す可能性が高くなる。すでに代表に内定した選手から反発も予想されている。

 また、年内延期については、感染拡大の終息が見通せないことから否定的な意見が多かった。(本誌取材班)

※週刊朝日オンライン限定記事