TOKYO FMのラジオマン・延江浩さんが音楽とともに社会を語る、本誌連載「RADIO PA PA」。今回は、無観客配信ライブを行ったサザンオールスターズについて。
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新型コロナウイルス感染が確認されてから、季節の移ろいを感じることができず、寂しさの募る半年間だった。でも、ここへ来て初めて「夏」を実感した。
6月25日、「サザンオールスターズ」デビュー記念日に、横浜アリーナでファンや医療従事者へ感謝を伝える無観客配信ライブ「サザンオールスターズ特別ライブ2020『Keep Smilin’~皆さん、ありがとうございます!!~』」が開催された。
有料配信で約18万人がチケットを購入、視聴者推定50万人以上というすさまじい規模のライブとなった。
「うちわや扇子を頭の上に乗せる行為は今日はいいでしょう。周りの方の迷惑になりません」
開演前の影アナにチケットを握りしめうきうきと横浜アリーナに入って席を探す気分が。
「ご飯を食べながらでも、お酒を飲みながらでも楽しめます!」。でも、僕はビールを我慢した。酒はライブが終わってからだ。ニッポンの夏の定番。待ちに待ったサザンのライブなのだ。
「スタンド~! アリーナ~! そして画面越しのみなさま~!」
桑田佳祐さんの登場に僕はTV画面に釘付けになった。
「みんなやスタッフのおかげで、このたびデビュー42周年を迎えました。ありがとうございます!」
オープニングはアルバム「SOUTHERN ALL STARS」収録の「YOU」。「ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND-NEW DAY)」「希望の轍」「Big Star Blues(ビッグスターの悲劇)」「フリフリ ’65」であっという間に気分は上昇気流に。「真夏の果実」ではデジャブな気分。本格的な夏はこれからだというのに、過ぎ去りし夏の匂いが蘇る。そう、夏はいつだってサザンの曲がそこにあったのだ。誰もいない客席には光るリストバンドが置かれ、「それを見ると泣いてしまうから、見ないようにして歌いました」。桑田さんが2日後オンエアの自らの番組(「桑田佳祐のやさしい夜遊び」毎週土曜23:00~)でそう語った。