久賀谷医師によると、ストレスがあるときや手持ち無沙汰のときについ食べすぎてしまうのは、手っ取り早く快楽を得られるから。食事をすると食べたものが糖質となって腹側被蓋野(ふくそくひがいや)を刺激、快楽物質であるドーパミンが放出される。
この脳の「快楽中枢」を食べ物によって刺激する習慣ができると、「もっと強い刺激」を求めるようになり、依存が生じる。酒やドラッグに対する依存と同じメカニズムだが、マウスを使った実験では、糖分にはコカインよりも高い依存性があるという結果が出たという。
工藤内科副院長でダイエット・コレステロール外来も担当する工藤孝文医師(37)も、コロナ太りは単なる食べ過ぎや運動不足ではないと指摘する。
「自粛期間中、食事と運動量は同じなのに体重が増えて血糖値が上昇したという相談が増えました。不安な気持ちになると、幸せホルモンと呼ばれる『セロトニン』が不足する。それを食事によって補おうとしたことが主な原因と考えられます」
コロナ禍のダイエットを考えるとき、脳の存在を無視することはできない。(1)何を食べるか(2)どうやって食べるか、この二つが脳に与える影響を順に見ていこう。
まず、何を食べるか。実はもっとも手っ取りばやくセロトニンを分泌する方法は、甘いものを食べること。疲れたりストレスを感じると、甘いものが食べたくなるのはそのためだ。ただし、甘いものによるセロトニンの効果は長くは続かない。甘いものを食べると血糖値が上昇し、今度はそれを下げるためにインスリンの分泌量が増える。すると下がりすぎた血糖値を上げるためにアドレナリンが分泌され、イライラが募る。そしてまた甘いものが食べたくなる……という悪循環が起きるのだ。また、セロトニンの他にも、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールや、満腹中枢に働くレプチンなど、ダイエットに関係するホルモンはいくつかあり、いずれもストレスや不安感と関係する。