「作物が枯れてしまった時、教授のところへ行って『どうしたらいいですか?』と相談しました。すると、『こうしようと思うがどうだろう?と聞いてほしい』と言われました。能動的な姿勢の意識づけのおかげで、自分で考える習慣ができました」
オフィスや都市に緑の空間を作る、すなわち自然のない場所に自然を作るにはアイデアと工夫、「考えること」が欠かせない。そこに面白さを見いだしている。
光や温度、環境を見て、それに合う植物を考える。暗い場所には暗さに強い植物を配置する。配置の仕方も、壁面や天井、空中まで、あらゆる空間を使う。その自由度を高めてくれるのがハイドロカルチャーだ。施工部門にいた頃、駅ビルの大規模なインドアガーデンを初めて責任者として担当した。その時、引き寄せられるように集まってきた人たちの「きれいだね」「ほっとする」という声が忘れられない。
「人は本能的に自然とのつながりを求めるという、バイオフィリアと呼ばれる考え方があります。空気をきれいにしてくれる植物は、私たちの心に癒しや潤いをもたらしてくれます。その点にも重点を置き、ただ飾るのではなく、心に響く緑の空間作りを心がけています」
最近では多くの企業が、働く環境向上のため、オフィス空間に緑を取り入れるようになっている。街中の緑、ビルの屋上緑化や壁面緑化はヒートアイランド現象の緩和にも役立っている。「まだまだできることは多い」と、渡邉さんは目を輝かせる。
「植物の力で地球環境と暮らしを豊かにし、サステナブルな社会を作っていきたい」 (文・石井聖子 撮影・西川知里)
渡邉 亮介(わたなべ・りょうすけ)
1982年愛知県生まれ。千葉大学園芸学部園芸別科を卒業後、2005年プラネットに入社。施工現場など多様な部署を経て、17年から経営企画室に所属。野菜ソムリエ、市民農園コーディネーターの資格も持つ。