ほとんどの遺体がPCR検査が陰性で、実際に新型コロナ陽性で亡くなった人は10人中1人もいなかったという。

「3月21日に母が検査・治療のために入院したのですが、急激に悪化し、コロナ感染の疑いをかけられ、個室に隔離の上、治療は抗生物質のみで夕方に多臓器不全で逝去しました。葬儀社は病院出入りの業者を含め3社に断られ、深夜にたかほう葬祭に対応してもらえました。25日夕方に陰性との結果が出ましたが、とにかく混乱に巻き込まれた葬儀でした」。そう話すのは母を亡くした加茂光恭さん(64)。

 新型コロナの影響で、葬儀マーケットは全体的に縮小傾向にあるという。

「お葬式には付帯的にさまざまな業界とのつながりがありますが、それらも会葬者の多少によって大きな影響を被っています」

 日本葬祭アカデミーを主宰し、お葬式、お墓、供養などに特化して研究、「葬祭ビジネス論」について大学でも教鞭をとる二村祐輔さんはそう話す。

 葬儀件数はほとんど変わらないものの、会葬者が減少しているという。3密を避けるからだ。

 地域とのつながりの強い地方の場合は、コロナ禍でもお別れをしてもらうために、会葬の時間を予約制にしたり、来訪時間を分散させたりするなど、密を避ける方法が取り入れられている葬儀もあるという。

「お別れに来てもらうのを断るのではなく、感染防止の対策を取り、できるだけ今までどおりにお葬式を行うことで、家族だけでなく、遺された人たちも気持ちの整理がつきますからね」

 と二村さん。

 本来、葬儀は死者を弔う儀式。一方で、告別式は宗教的な意味よりも社会的な対応である。葬儀+告別式をお葬式とするケースが多いが、本来は別々に行ったほうがいいと二村さんは強調する。新型コロナの影響で、葬儀は身内だけだが、告別式はまた別の日に執り行うという傾向も増え始めているという。

 二村さんは、最後にこう話した。

「死の覚悟というのは考えたくない葛藤ですが、高齢者の世代責任として、生前に終えんの付託をしておくこと、これも人生の礼儀ではないでしょうか」

(本誌・鮎川哲也)

■お詫び
記事中に記した「一般の火葬が15時に終わるので、その遺族の方々の解散後、疑いのある遺体は16時からの火葬となります。新型コロナの疑いであっても遺族の方の立ち合いはできません」(臨海斎場の担当者)というコメントに事実誤認があり、削除しました。関係者の皆様、ご迷惑をおかけし、申し訳ございませんでした。

週刊朝日  2020年8月28日号

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