松尾さんの大学時代に公開された『スターウォーズ 帝国の逆襲』(1980年)で、「ヨーダ」が初めて登場するが、そのモデルではないかとされているのが、大阪芸大で教鞭をとっていた依田義賢氏。映画監督・溝口健治のもとで長く脚本を手がけていた依田氏は、アメリカで行われた講演で、ジョージ・ルーカスを紹介される。依田さんの名刺を見たジョージ・ルーカスは「YODA」という文字の並びが大変気に入り、「ヨーダ、いい響きだ」といたく喜んだという。一方の依田氏は、ルーカスに耳の長さをからかわれ、ちょっと機嫌を損ねて帰ってきた。
とにもかくにも、「ヨーダ」は『スター・ウォーズ』シリーズのシンボル的なキャラクターとなり、松尾さんもキャラクターとしての『ヨーダ』を折ってみた。面白くなって、いろいろな「顔」を折りはじめるようになる。
さらに、もうひとつの出会いがあった。ラジオやテレビの仕事を始めた松尾さんが東京に住みはじめた頃、河合豊彰氏のアトリエが東京・世田谷区にあることを知る。電話をかけ、「子どもの頃から作品を見ていて、好きだったんですけど、お邪魔するようなことはできますでしょうか」と尋ねると、「いま、ちょうど弟子が3人くらい来て、折ってますから、あなたもいらっしゃい」という返事が返ってきた。
「それでお邪魔して、眼の表情の作り方とか、二重まぶたはこうやって折るといいよ、とか河合先生から教えていただいたんです。小さい頃から本で見ていた人が、なんと目の前で教えてくれている! とたいへん感激しましたね」
以来、「折り顔」と長く向き合い続けている松尾さんに、実際に「折り顔」を折ってもらいながら、話を聞いた。
――人の顔を折るときは、どこから始めるんですか?
まずは、その人の印象ですね。似顔絵を描くとしたら、どこをデフォルメするかな、といった特徴的なところをまず優先して、そこを折るための紙の端くれをどこかに置いておこう、みたいなことを頭に入れておいたうえで、普通の折り紙で試し折りをします。これでいけそうかな、となったら、本番用の大きな紙で折っていきます。