俳優・市村正親さん。撮影中も笑顔を絶やさず、とにかくエネルギッシュ (撮影/写真部・小黒冴夏)
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俳優・市村正親さん (撮影/写真部・小黒冴夏)
俳優・市村正親さん (撮影/写真部・小黒冴夏)

 黒澤明生誕110年記念作品「生きる」が、10月9日(金)から始まる。主人公の渡辺勘治を演じる市村正親さんは18歳から役者の道を志し、少なくても年3本はミュージカルを中心に舞台に立っている。しかし、今年は新型コロナウイルスの影響で相次いで公演ができなくなった。

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「ミス・サイゴン」が中止になり、家に籠もっていた期間を、「この5~6カ月の僕は、役者じゃなかった。ただのお父さんだった」と振り返る。

「子供たちとの毎日は、楽しいし幸せなんだけれど、でもなんか活気がないというか、生気がないというか……。それが、8月の半ばに帝劇でコンサートがあって、翌日、鏡を見たら、『あれ? 昨日やはり人に見られたから、視線という栄養素をもらったのか、顔がキリッとしているな』と思った。役者は人様に見てもらうことで、役者でいられるんだなぁということを実感したんです」

 その表情は朗らかで、声にはハリがある。突然歌い出すこともあれば、また突然役になり切ったように大きなジェスチャーをする。思わず「ずっと動いていて、疲れませんか?」と訊くと、「それが好きなんだって」と言ってニヤリと笑った。

「『よくそんなにいつも動いてますね』って言われるけど、僕は『死ぬまで動きますよ』って返事する。大丈夫! どうせいつかは動きたくても動けなくなるんだから(笑)」

 1990年、41歳で劇団四季を辞めた時も、一番後ろ髪を引かれたのは、自由に使える稽古場がなくなることだった。

「四季にいた頃は、稽古終わったらみんな帰っちゃうから、そのあと、一人で稽古ができた。僕は、(『生きる』でダブルキャストを務める鹿賀)丈史のように才能に恵まれていたわけじゃなく、這い上がってここまできた人間だけれど、稽古を苦だと思ったことがない。身体のメンテナンスもそう。今日も、ここに来る前にマグマの力を使ったヨーガで、1キロ汗をかいてきた。だから、71の割には肌もキレイだと我ながら思ってるんだけど、どうかな(笑)」

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