※写真はイメージです (GettyImages)
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聖路加国際病院の医療者バーンアウト率 (週刊朝日2020年12月11日号より)
聖路加国際病院の医療者バーンアウト率 (週刊朝日2020年12月11日号より)

「仕事でコロナに対応していることは、当時は家族にも言えなくて、それがつらかった。現場では支え合いながらやっていましたが、他部署では辞めていった看護師さんもいました」

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 そう話すのは、都内の医療機関で、3月から発熱外来を担当している看護師のTさん(30代)。全国的に新型コロナの感染者が急増しているが、ここの医療機関でも発熱外来を訪ねてくる受診者の数が増えた。そのなかには市中感染や感染経路不明の患者もいる。

「最初のころと同じような状況になると考えると不安。夏場からは落ち着いていたので気持ちの切り替えが難しいです」

 コロナ禍で逼迫(ひっぱく)する医療現場を支えているのが、看護師だった。一方、新型コロナの第1波で疲弊した現場で、最も大きなダメージを受けたのも看護師だ。聖路加国際病院(東京都中央区)感染症科の松尾貴公医師が、緊急事態宣言が出ていたころの様子をこう語る。

「マスクや防護具が足りない、医療崩壊が起こる、といった不穏な空気が院内に広がっていた。それまで明るくよく話していたスタッフの表情が急に暗くなったり、病院に来られなくなったりする人も出てきました」

 強いストレスから、疲労感や虚無感、やりがいの喪失などの症状が表れる“燃え尽き症候群”(バーンアウト)の傾向が顕著だったという。バーンアウトでは仕事を続けるモチベーションが失われるため、離職などにつながる恐れがある。

 海外では、フランスの看護師組合の調査で、看護師約6万人のうちの6割弱が、疲労の度合いや健康状態がバーンアウトの状態にあったことがわかった。組合は、3万4千人の看護師が不足し、労働条件の悪化でさらに辞めていく恐れがあるとの声明を出した。

 同様に松尾医師は、今年4月上~中旬、重症の陽性患者が次々と運ばれてきていた時期に、病院の医師や看護師らがどのくらいの割合でバーンアウト状態にあるかを調査した。対象者は救急、一般内科、呼吸器内科、感染症科、集中治療室(ICU)などで、コロナ診療に対応していた約370人。バーンアウトを測定する尺度を用いて調べた。

 その結果、全職種で、バーンアウトと認められた割合は31.4%(312人中98人)。職種別では看護師が46.8%で最も高かった。自由記述で何にストレスを感じたかを質問したところ、職種にかかわらず、「自分自身の感染」「家庭へのウイルスの持ち込み(と感染)」「患者さんに感染させてしまうこと」などが挙がった。

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