試写会で観客と談笑する高原秀和、えのき雄次郎の両監督、平本一穂さん、水野スミレさん(左から)。「仕事への姿勢はビジネスマンと変わらないのに驚いた」(女性客) (撮影/高井正彦)
試写会で観客と談笑する高原秀和、えのき雄次郎の両監督、平本一穂さん、水野スミレさん(左から)。「仕事への姿勢はビジネスマンと変わらないのに驚いた」(女性客) (撮影/高井正彦)
この記事の写真をすべて見る

 男なら、AVを見て、「あーこの男優うらやましー!」 と血流を速めることはあっても、「こんな相手とセックスするなんて大変だな」と気の毒がることは、まずないだろう。

 無名なら数千人、有名どころは約70人とされる現役AV男優。そのうち20人のインタビューをまとめたドキュメンタリー映画「セックスの向こう側~AV男優という生き方」を見ると、彼らに対する認識の至らなさを思い知らされる。

「ぶっちゃけ、9割は好みじゃないです。9割以上かな」
「笑うとかわいいとか(中略)横顔もいいとか、『加算法』でやってきました」
 
 そう語るのは、平本一穂さん(47)だ。調理師などを経て20歳でAV男優に。以来7千人近くを相手にしてきた。現在はAVメーカー社長と監督も兼ねる。

 時代劇俳優としてのキャリアもあり、交わった女優は約4千人という速水健二さん(51)も、こう言う。

「タイプをもたないようにしたんです。この人は僕の好み、この人はちょっとイヤだと思うと、下半身に反応が出ちゃうんです」

 どうやら、男優が見せる興奮のウラには、極限的なプラス思考や滅私の境地への到達など、本能とはかけ離れた工夫と努力が隠されているらしい。

次のページ