

放送作家でコラムニストの山田美保子氏が楽屋の流行(はや)りモノを紹介する。今回は、江戸和菓子『銀座 菊廼舎(きくのや)』の「冨貴寄(ふきよせ)」について。
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テレビ界で長年仕事をさせてもらってきて何が有り難いかというと、贈り上手の芸能人から流儀を教われることだ。
昨年末、明石家さんまさんからまたまたお年玉をいただいた。上品なポチ袋に角印が押してあり、番組スタッフ全員分。全局でいったい何人分になるのやら。それも必ず新券だ。折り畳んだり袋詰めをしたり押印したりするだけでも一苦労だろう。
これまでも何度か書かせていただいたが、石原軍団と林家一門の双方の流儀を受け継ぐ峰竜太さん、美どりさん夫妻からは、何かにつけて豪華な贈り物をちょうだいする。とてもではないが、お返しが追い付かない。
ベテラン芸能人はなぜアレンジメントが上手な花屋をはじめ、セレクトショップや銀食器や和小物の名店をこんなにも知っているのか。そして、なぜこうもマメなのか。
このようにセンスと目利きとマメさで群を抜く贈り物の達人が、かなりの確率で利用しているのが江戸和菓子『銀座 菊廼舎』の「冨貴寄」。この当て字を見て、箱や缶を開けて、どれほど豊かな気持ちになったことだろうか。
記憶にあるだけでも、某有名人夫婦に送った出産祝いの内祝いに添えられていたり、某有名人の叙勲に胡蝶蘭を送らせていただいたときのお祝い返し。この1年近くは全くないのだけれど、芸能人の結婚披露宴の引き菓子として何度ちょうだいしたかわからない。
“ヤマダ調べ”では、ただ贈り上手というだけでなく、日頃から何もかもがキチンとなさっている方々がこの「冨貴寄」を選んでいるような気がする。
それもそのハズ、『菊廼舎』さんの合言葉は「心やすらぐ おいしいものを」で、モットーは、安心・安全な素材のみを職人さんたちが厳選し、一つ一つ、一枚一枚、丹精こめて作ること。
明治23(1890)年の創業。日本の美しい四季を菓子づくりのひとつの重要な素材として考え、「目で味わい、季節を愉しませる江戸の粋な菓子道」を5代目当主がしっかり受け継いでいるのだ。
「冨貴寄」にも、日本の四季が見事に再現されていて、食べてしまうのがもったいなくなるような美しい彩りとこまやかな心遣いがギッシリと宝石箱のように詰まっている。
芸能界屈指の贈り物の達人御用達。是非、あなたのリストにも加えていただきたい。
山田美保子(やまだ・みほこ)/1957年生まれ。放送作家。コラムニスト。「踊る!さんま御殿!!」などテレビ番組の構成や雑誌の連載多数。TBS系「サンデー・ジャポン」などのコメンテーターやマーケティングアドバイザーも務める
※週刊朝日 2021年1月22日号