作品賞の「星の子」で主人公を演じた芦田愛菜(C)朝日新聞社
作品賞の「星の子」で主人公を演じた芦田愛菜(C)朝日新聞社

「私をくいとめて」で主演女優賞を受賞したのん(C)朝日新聞社
「私をくいとめて」で主演女優賞を受賞したのん(C)朝日新聞社

 第30回日本映画批評家大賞の受賞結果が3月10日に発表され、大森立嗣監督の「星の子」が作品賞を受賞した。主演女優賞に「私をくいとめて」ののん、主演男優賞には「山中静夫氏の尊厳死」から中村梅雀と津田寛治が選ばれた。

【写真】芦田愛菜が表紙を飾ったAERA

 日本映画批評家大賞は、批評家だけの目で選んだ映画賞として1991年に発足。過去には大林宣彦監督の「青春デンデケデケデケ」(1992年度)や、若松孝二監督の「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」(2008年度)などが作品賞に選出されている。

「星の子」は今村夏子の同名小説(朝日新聞出版・刊)を映画化した作品で、新興宗教を信じる両親に育てられた中学生の少女の葛藤を描いた物語だ。主人公のちひろを芦田愛菜、永瀬正敏と原田知世がちひろの両親を演じた。

 自ら「読書好き」を公言する芦田は、2020年9月に行われた「星の子」の完成報告イベントで「揺るがない自分の軸を持つことは難しいじゃないですか。だからこそ人は『信じる』と口に出して、不安な自分がいるからこそ、成功した自分や理想の人物像にすがりたいんじゃないかなと思いました」と、「信じること」の大切さを熱弁。映画では、怪しい宗教に傾倒する両親や想いを寄せる教師との関係のなかで、心揺れる中学生の女の子という難しい役どころを見事に演じきった。

 また、「私をくいとめて」は主演女優賞と共に監督賞も受賞した。こちらも同名の小説(綿矢りさ・原作、朝日新聞出版・刊)を映画化した作品。初めて実年齢より年上の役、“31歳のおひとりさま”みつ子を演じたのんは、2020年12月の週刊朝日の取材で「全国のみつ子さん、みつ夫さんにとって、自分の中の『みつ子的な部分』を肯定してもらえる映画だと思っています。誰かと見ても、もちろん“おひとりさま”で見にいくのもよしです(笑)」と語っていた。

 すべての受賞結果は以下の通り。

◆作品賞
「星の子」

◆主演男優賞
中村梅雀「山中静夫氏の尊厳死」
津田寛治「山中静夫氏の尊厳死」

◆主演女優賞
のん「私をくいとめて」

◆助演男優賞
宇野祥平「罪の声」

◆助演女優賞
浅田美代子「朝が来る」

◆監督賞
大九明子「私をくいとめて」

◆新人監督賞
内山拓也「佐々木、イン、マイマイン」
HIKARI「37セカンズ」
佐藤快磨「泣く子はいねぇが」

◆新人男優賞(南俊子賞)
宮沢氷魚「his」
奥平大兼「MOTHER マザー」

◆新人女優賞(小森和子賞)
服部樹咲「ミッドナイトスワン」
佳山明「37セカンズ」
吉本実憂「瞽女 GOZE」

◆ドキュメンタリー賞
「ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ」

◆アニメーション作品賞
「劇場版 ごん - GON, THE LITTLE FOX -」

◆脚本賞
天野千尋「ミセス・ノイズィ」
入江悠「AI崩壊」

◆編集賞(浦岡敬一賞)
李英美「スパイの妻(劇場版)」

◆映画音楽賞
渋谷慶一郎「ミッドナイトスワン」

◆特別賞(松永武賞)
新文芸坐

◆ゴールデン・グローリー賞(水野晴郎賞)
火野正平「罪の声」

◆国際審査委員特別賞
チェ・ブラム

                     (文:AERA dot.編集部)