3種類とも、感染力が従来のウイルスよりも強まっているとみられる。ブラジル株についてはまだ詳細はわからないが、少なくとも英国株と南ア株は、重症化率を左右する病原性も高まっていると考えられている。
英国株は、従来株に比べて感染力が4~7割程度高い。一時期、英国株は従来株より子どもが感染しやすいと指摘されたが、英国政府の専門家会合の小児分科会は2月、「変異株は感染力が上がっているが、(子どもを含め)特定の年代に対してとくに感染力が上がっているわけではない」という結論をまとめた。
英国株の病原性について、英ブリストル大学などの研究チームが「BMJ(英国医師会雑誌)」に発表した論文によると、2020年10月~21年1月までに感染した約5万5千人の分析では、英国株への感染者のほうが死亡率が64%高かった。
■ワクチン効果への懸念
南ア株は感染力が50%程度、死亡率も20%程度増加するという報告がある。ブラジル株についてはまだ確実なデータはないが、WHOによると感染力が2.5倍になるとの報告がある。
変異株は、ワクチンが効かなくなる、あるいは一度感染した人が再感染する恐れもある。ワクチンの効果が薄れたり、再感染が起こったりすれば、新型コロナウイルスの流行がなかなか収束しないことになる。
米疾病対策センター(CDC)によると、現時点では、ワクチンの効果についてもっとも懸念されるのは南ア株、懸念が少ないのは英国株だという。
ブラジル株は、従来株に感染した人の再感染がすでに報告されている。WHOによると、予備的なデータではあるものの新規感染者の6.4%が再感染だという報告があるという。
変異の多くは、新型コロナウイルスの表面にある「スパイク(S)たんぱく質」の遺伝子にある。たんぱく質はアミノ酸がつながってできている。懸念される3種類の変異株が共通して持つ変異「N501Y」は、501番目のアミノ酸がアスパラギン(N)からチロシン(Y)に変わっている。ウイルスが感染する時にヒトの細胞表面のたんぱく質と結合する部位にあるため、感染力が変化すると考えられている。