実は私は4月9日の午後、細谷雄一慶応大教授と一緒に、首相官邸で菅首相に会った。
バイデン大統領との会談での菅首相の提言について、私たちの願いを進言するために、である。
私たちは、当然ながら日米同盟の強化、というより、従来のいわば受け身の同盟から積極的な同盟に転じるべきであり、米中対立の間に立って、日本は主体的な戦略を持つべきだ、と考えている。
だから、ウイグル問題についても、米国と目的は完全に共有しながらも、アプローチの仕方は自主的に選択すべきだ、と捉えているのである。
バイデン大統領は太平洋の安全保障について、日本に大きく期待しているはずである。
経済的にも軍事的にも拡大を図る中国に対して、太平洋の安全保障をどのように持続させるか。
現在の米国には、はっきり言ってその力量がなく、日本としてはASEAN諸国やインド、オーストラリアなどとの関係を強化し、場合によっては安全保障にまで踏み込んだ戦略の構築が必要になるのではないか。
積極的な日米同盟への転換。このことを菅首相に強く訴えた。
田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数
※週刊朝日 2021年4月30日号