「戦争になれば、緒戦は中国軍が有利です。中国は約1500発の中距離弾道ミサイルを保有しているとされ、九州・沖縄には10分前後で到達する。連続的に撃ち込む『飽和攻撃』をされたら撃ち落とすのは不可能です。沖縄の在日米軍も対航空機用のミサイルしか持っていないので、防ぎようがない」

 これに対抗するために米国が検討しているのが中距離弾道ミサイルの南西諸島への導入だ。日本が受け入れれば、中国本土が射程圏内になり、敵基地攻撃能力を保有することになる。だが、こうしたシナリオは米国の軍拡のための“キャンペーン”だとの指摘もある。

「台湾有事がにわかにクローズアップされたのは、日本に中距離弾道ミサイルを導入させるための口実。実際に中国が台湾に侵攻すれば米軍との全面戦争になるので、現実的ではありません。態勢を固めさえすれば、空母を11隻も持つ米国が圧倒的に有利だからです」(小西氏)

 海自も空母化した「かが」が宮崎の新田原基地に配備されたステルス戦闘機F35Bを載せていくことになりそうだ。ただ、中国海軍も急速に軍備を増強している。

 米中間の軍事的緊張の高まりが、予期せぬ戦争を引き起こす恐れがある。東シナ海や南シナ海での艦船同士の衝突といった偶発的な事故を機に、事態は急激に緊迫し得るのだ。前出の前田氏が語る。

「いま海上自衛隊は米第7艦隊と一体化して行動している。2015年の安保法制で、自衛隊は米軍を守るため武器が使用できるようになりました。米中の艦艇同士が偶発的な衝突を機に戦闘に及べば、海自は武器を使用して米側に立つことになる。小さな火が大きく燃え上がる可能性もあります」

 現場の司令官が冷静さを持ち続けられる保証はない。紛争がエスカレートすれば、南西諸島の自衛隊ミサイル基地が標的となり、中国からミサイルが雨のように飛んでくるだろう。宮古島に建設された弾薬庫にいたっては、住民居住地から200メートルしか離れていない。住民を巻き込み、「第2の沖縄戦」の様相となりかねない。

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