放送作家・鈴木おさむさんが、今を生きる同世代の方々におくる連載『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は、2年前に起きた池袋暴走事故の裁判について。
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息子、笑福が6歳になりました。あっという間の6年。自分の子供が成長していく姿を見ることが出来る幸せ。毎朝起きて、ご飯食べて、保育園に送って、帰ってきて、風呂入って寝る。当たり前のことに慣れてしまうけど、この当たり前は当たり前ではないと、強く思うようにしている。
子供が川で流されて死亡したというニュースを見て、胸をギュっとわしづかみにされる。かわいそうという思いと同時に、恐怖。もし、息子がそうなったらと。
当たり前の日常はある日突然壊れてしまう可能性があり、その可能性は誰にでも突然訪れることもある。
東京・池袋で車を暴走させて母親と子どもを死亡させた罪に問われている90歳の被告の裁判。21日に、遺族による被告人質問が行われたというニュース。
旧通産省の幹部だった飯塚幸三被告90歳。おととし4月に、東京 池袋で車を暴走させて松永真菜さんと長女の莉子ちゃんを死亡させた事件。莉子ちゃんは3歳でした。
飯塚被告は無罪を主張していて、今回、妻子を亡くした松永拓也さんが「事故当時、あなたは100%ブレーキを踏んだ自信があるのか」という質問をした。それに対し、飯塚被告は「心苦しいとは思うが、私の記憶では踏み間違いはなかった。私の過失はないものと考えています」などと述べたと。
このニュースを聞いて、今まで体の中に沸き上がったことのない感情が混じっていく。悲しみや怒りはもちろん、もしこれが自分の息子だったら冷静でいられるのか?とか。亡くなって2年たっているのに、その痛みは和らいでいくどころか、強くなっているはずだ。
松永さんはこの2年、どんな思いで過ごしてきたのだろう?会見などを見ていると、とても我慢している。感情に強い蓋を閉めて、答えている。自分だったらああいられるだろうか?
見ながら拳をギュッと強く握りしめてしまう。