移転に関わる側にとって一番厄介だったのは小池都知事よりも、その特別顧問の一人でした。豊洲はとんでもない欠陥の市場であるといった考え方を流布して、移転問題の混乱のもとを作った人物と私は思っています。多羅尾さんは正直、その特別顧問の暴走を止められなかった印象です。その時の多羅尾さんは唯々諾々と知事なり特別顧問の意向を受けているばかりで、まともに抵抗していたようには見受けられなかった。
良くも悪くも調整型の役人で、リーダーシップを取れる人ではなく、自ら何かを仕掛けるといったことをあまりしない人なのだと思います。市場移転問題のときもそうでしたが、上からの指示にすごく忠実な人。こう言っては怒られそうですが、人望はないと思いますよ。部下たちが、「あの副知事のためなら身を粉にして働こう」となるタイプではないです。
平時には調整役は重宝がられますし、害を及ぼすことはありませんでしたが、市場移転問題や現在のコロナは有事の時です。長引けば、都政は停滞してしまうのではないでしょうか。
――小池都知事と多羅尾副知事の関係性は。
言葉は悪いですが、いつも小池さんの後ろにくっ付いている印象です。都庁の中でも、多羅尾さんの能力を買っている人はそれほどいないのではと思いますが、小池さんには気に入られています。
――小池都知事の右腕的な存在なのでしょうか。
「右腕」と言うと「辣腕を振るう」「権謀術数に長けた人」というイメージがありますが、そうではないですね。おそらく「イエスマン」という表現が一番近いと思います。
役人の出世には能力だけでなく、知事との相性や気に入られるか否かも多分に影響します。小池さんの気質として、部下の役人から立てつかられるとカチンときて、そういう職員を排除しがち。実際に排除された局長は何人もいます。一方で、自分の言うことに忠実に従ってくれる人を重宝する傾向があります。そういった意味で多羅尾さんが気に入られて、役人の筆頭にまで上ったのはうなずけます。