──今年再び演じるにあたり、どのような思いがありますか?

 原作が完結して映画があれだけヒットした中で挑む舞台って、けっこう異例です。もはや日本中の誰もが知っている作品で、プレッシャーがないと言えば嘘になる。

 でも、前作では、役者も制作スタッフも試行錯誤して、全員、舞台でしかできない鬼滅の刃をやりきった実感があると思うんです。だから自分たちがやってきたことを信じるしかないなと。

──一般的な舞台と2.5次元の舞台は、演じる上でどんな違いがあるのでしょう?

 2.5次元は、とにかく制約とやるべきことが多いですね。お客さんの中には、イラストの美しい見た目やアニメの声のイメージがある。そこに寄り添いつつ、役者としての自分の良さも足していかなきゃいけない。

 演じるキャラクターをより深く理解できるよう研究し尽くします。でも、自分の考察とファンの方一人ひとりの考察が完全に一致することはない。そこは割り切っています。すべてのお客様に納得してもらう演技を目指すより、植田圭輔だからできる演技を追求したい。なので役作りの上で、他の人の意見や感想はあまりチェックしません。

──それでも、周囲の声や評価が気になってしまうことはないですか?

 僕、高望みの野望って昔からまるでないんですよ。有名になることや人気が出ることがそんなに大事?って思っちゃう。それよりも、楽しく本気で芝居に打ち込める場所があって、それを受け取ってくれる人がいることが僕の幸福論なんです。

 でも時々、単なる見た目のことなど芝居以外のことについて意見を言う人がいて、耳に入ります。やせすぎじゃないかとか、役のメイクが良くないとか。

 もしかしたら良かれと思って言っているのかもしれないですが、正直、取るに足らないことかなと。役者としては、やはり演技を見て評価してもらいたいです。

 昔は、伝わらない胸の内を抱えて苦しくなったこともありました。でも今は、自分にできることは妥協せず誠実に役に向き合うことしかないと思っています。純粋に演劇を楽しんでいる方や、僕の演技が好きで応援してくれる方の期待には、舞台の上でしか応えられないですから。

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