自民党の国会議員たちは、国民の多くが期待している人物が総裁になることを求めている。そうでないと、自分たちの衆院選での当選が望めないからである。
実は、途中までは、石破茂氏が総裁選に出馬の意欲を強く示していた。そして私は石破氏に、2度電話をした。彼を激励するためにである。1度目の電話で石破氏に、国民の多くは、あなたが総裁になることを望んでいるはずだ、と強調した。
石破氏は2018年の総裁選で、安倍首相の政策を厳しく批判して立候補した。小選挙区制になったこともあり、安倍政権下では、自民党のほとんどの国会議員が、安倍首相のイエスマンになってしまい、安倍首相を公然と批判したのは石破氏だけであった。だから、石破氏の出馬に期待したのである。
だが、2度目の電話で石破氏は、当選の自信がないので出馬しない、として河野太郎氏を当選させるために支援する、と語った。
河野氏は、脱原発を唱えていて、党内には反対の国会議員も多いはずなのだが、その彼らは、国民の期待に沿う総裁でないと、自分たちは落選すると強く感じているのである。さて、総裁選はどうなるのか。
田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数
※週刊朝日 2021年10月8日号