4年ぶりの総選挙が10月31日に実施されることになった。「小選挙区比例代表並立制」が導入されて25年。この制度では、「対立の構図」が固まり「人」が選べないという問題点が見えてきた。AERA 2021年10月18日号で取り上げた。
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「イの一番に国民の皆様に、この岸田にお任せいただけるのかどうか、この御判断を頂きたい」
菅義偉首相(72)の後任として第100代の首相に選出された岸田文雄氏(64)。4日夜の記者会見で、解散総選挙に踏み切り、就任したばかりの自らへの信任を問う考えを表明した。
新型コロナウイルス禍や支持率の低迷に苦しんだ菅氏が衆院解散に踏み切れなかったこともあり、衆院選は4年ぶり。戦後初めて任期満了日を超えた選挙だ。1996年に始まった「小選挙区比例代表並立制」では9回目の選挙で、全国289の小選挙区を中心に与野党が議席を争うことになる。
岸田氏は93年の衆院選で、中選挙区時代の旧・広島1区から初当選。小選挙区制になってからも四半世紀、広島1区の議席を守ってきた。祖父から3代続く世襲政治家だ。
その岸田氏が政権運営の要である官房長官に起用したのは、出身が対照的な松野博一氏(59)だ。
サラリーマンや松下政経塾の塾生を経て、地盤(選挙区)、看板(知名度)、カバン(資金)の「3バン」を持たずに国政に挑戦。96年の選挙で、自民党千葉県連が実施した公募によって千葉3区の候補者に選ばれた。
かつての保守系候補は、世襲や地方議員、官僚OBが幅をきかせてきたが、90年代前半の党分裂と小選挙区制導入によって、自民党は都市部を中心に候補者不足に直面していた。そこで各県連や党本部の主催で行われたのが公募だった。
■自民は世襲や現職を優先 候補の新陳代謝は難しい
「候補のなり手のいない空白区の穴埋めに過ぎない」
そうした冷ややかな地方議員もいて、初陣は新進党の岡島正之氏に敗れたが、2000年に岡島氏を破って初当選。以来、比例復活を含めて7回の当選を重ねてきた。国政選挙の候補者の公募は、日本新党が先駆けたものだが、松野氏は自身の広報で「日本初の公募制度から生まれた衆議院議員」とアピールしてきたこともある。