衆院選がいよいよ幕を開けた。31日の投開票に向け、全国各地で舌戦が繰り広げられている。中でも注目は「香川1区」。前デジタル相の平井卓也氏と立憲民主党・小川淳也氏という「正反対」の候補が激突する。AERA 2021年11月1日号から。
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もしかすると今回の総選挙で、全国一の注目区かもしれない香川1区に激震が走っている。選挙戦の構図は前自民党衆院議員で、菅内閣では初代デジタル相だった平井卓也氏に、ドキュメンタリー映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」で話題を呼んだ立憲民主党・小川淳也氏が挑む。共産党県委員会が小川氏支持を表明するなど野党共闘の枠組みは整い、事実上の一騎打ちの構図だ。
平井氏は高松では「王国の主」と呼ばれている。郵政相を務めた祖父・太郎氏、労働相を務めた父・卓志氏と3代にわたって世襲を貫く。その知名度は高松では知らぬ者はないほど。過去6回の総選挙で、小川氏は選挙区では1勝しかできていない。
だが、選挙戦序盤ではあるが、その地盤が揺れている。10月21日、地元でシェア率6割とされる四国新聞が「小川先行」と報道。この一報の意味は大きい。
■身内贔屓がバレて仇に
というのも、平井氏は元四国新聞の取締役で現在は弟・龍司氏が社長に就いている。社主は平井氏の母・温子氏だ。しかも、西日本放送というテレビ局・ラジオ局を系列放送局に従える。そんな平井一族の新聞が「小川先行」と打ったのだ。身内の引き締めの意味合いもあるだろう。しかし、ある地元メディア関係者は、香川1区が全国的に注目されたことで、四国新聞のこれまでの報道姿勢そのものが平井氏に不利に働いていると分析する。
「昨年、平井氏がデジタル相就任後、初めて高松に戻った時、四国新聞は先祖のお墓参りをする平井氏を写真入りで大々的に取り上げた。デジタル庁発足の日は紙面ぶちぬきで特集です。けれども、オリパラアプリをめぐる平井氏の恫喝(どうかつ)疑惑などは申し訳程度。中央では他の媒体があれだけ批判しているのに、四国新聞紙面ではその事実がなかったように扱う。その身内贔屓(びいき)が世にバレ、仇になっている」