映画「軍艦少年」は、10日からヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開 (c)2021『軍艦少年』製作委員会

「イケメン」などという言葉がなかった時代。その端正なルックスは、加藤さんの俳優としてのイメージを二枚目役に定着させてしまった。

「駆け出しの頃はとくに、『こういうものしかやれないでしょう?』という固定観念からきた役が多かったと思います。ただ、演技力のこともあり、いくら『変わった役がやりたい』と主張したところで、やれないことも多々あったはず(笑)。それが最近は、突然70歳の役が来たりするようになった。ありがたいことではあるんですが、『70歳の役』なんて言っても、見る人は僕を『この人70歳』と思って見ていないですからね。大体、舘ひろしさんも奥田瑛二さんも70過ぎなんですから、年齢なんてあくまでも物理的な記号に過ぎないことがわかるでしょう? 僕はとにかく、『若い』とか『かっこいい』と言われるよりも、役者として『面白い』と言われるようになりたい。年齢に関係なく、この人にこれをやらせたら面白いと思われる役者に」

 自分のイメージから脱却するために、ある時期から、積極的に映画やドラマのクリエーターと会うようになった。映画監督を紹介されて、「もっといろんな役をやってみたい」とアピールしたこともある。

「(『軍艦少年』のYuki)Saito監督も、何年か前にショートフィルムフェスティバルで出会ったときからのご縁です。撮影は1カ月足らずでしたが、この映画は、『軍艦島が見える街』というロケーションに、ものすごい説得力があったと思う。役者って毎日をどう過ごすかがすごく大事。人として、普通の暮らしをしていなければ、普通が演じられないように、ロケーションが醸し出してくれる雰囲気っていうのがあるんです」

(菊地陽子 構成/長沢明)

加藤雅也(かとう・まさや)/1963年生まれ。奈良県出身。ファッションモデルとして活躍後、88年主演映画「マリリンに逢いたい」で俳優デビュー。95年にLAに拠点を移して英語での演技、メソッド演技の勉強をする。帰国後、映画、テレビ、舞台などで活躍。海外の監督の映画に積極的に参加。国際交流基金アジアセンター事業諮問委員、なら国際映画祭特別顧問、奈良市観光特別大使なども務める。

週刊朝日  2021年12月17日号より抜粋

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