今から思えば、けっこう大変な生き方をしていたことになるが、生きることがしんどくなるなんてことは全くなかった。
当時は私だけでなく、日本人の多くが生活するのに苦労していたはずだが、生きづらいなんて話はほとんど聞かなかった。
それは私を含めて、日本人のほとんどが、頑張れば日本が、そして国民の生活が豊かになる、と強く思っていたからである。そして、日本は世界中が奇跡と捉えた高度経済成長を成し遂げた。
だが現在、世界の著名な経済学者たちが、資本主義は行き詰まっていると捉えている。今の日本では、働く人間の4割が非正規社員で、女性の場合は5割超が非正規社員である。少子高齢化の中で、ほとんどの国民が将来展望を持てず、現在の苦悩しか考えられない。だから現在の生活に絶望し、生きていくことをあきらめてしまうのであろうと捉えている。
この現状をどう変革すればよいのか。深刻に受け止め、全力で取り組みたい。
田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数
※週刊朝日 2021年12月24日号