イラスト/ウノ・カマキリ
イラスト/ウノ・カマキリ

 今から思えば、けっこう大変な生き方をしていたことになるが、生きることがしんどくなるなんてことは全くなかった。

 当時は私だけでなく、日本人の多くが生活するのに苦労していたはずだが、生きづらいなんて話はほとんど聞かなかった。

 それは私を含めて、日本人のほとんどが、頑張れば日本が、そして国民の生活が豊かになる、と強く思っていたからである。そして、日本は世界中が奇跡と捉えた高度経済成長を成し遂げた。

 だが現在、世界の著名な経済学者たちが、資本主義は行き詰まっていると捉えている。今の日本では、働く人間の4割が非正規社員で、女性の場合は5割超が非正規社員である。少子高齢化の中で、ほとんどの国民が将来展望を持てず、現在の苦悩しか考えられない。だから現在の生活に絶望し、生きていくことをあきらめてしまうのであろうと捉えている。

 この現状をどう変革すればよいのか。深刻に受け止め、全力で取り組みたい。

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数

週刊朝日  2021年12月24日号

著者プロフィールを見る
田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

田原総一朗の記事一覧はこちら