だが、異次元緩和の金融政策は、金利上昇を阻止することにその眼目がある。それなのに、円買い介入をすると、この眼目が崩れてしまう。それが否なら、短期金融市場で日銀が円資金の供給を行うしかない。
だが、これをやると日本の金利は低いままなので、円安に歯止めがかからない。これまた、何のための介入なのかわからない。さりとて、金利上昇を放置すれば、異次元緩和政策と矛盾する。矛盾をいとわず円供給を見送れば、「すわ、いよいよ異次元緩和は終わりか」と思われてしまいかねない。これはまずい。
かくして、介入は厄介の極みだ。政府と日銀は、さぞや、頭痛とめまいに苦しんでいるに違いない。身から出た錆だ。
浜矩子(はま・のりこ)/1952年東京都生まれ。一橋大学経済学部卒業。前職は三菱総合研究所主席研究員。1990年から98年まで同社初代英国駐在員事務所長としてロンドン勤務。現在は同志社大学大学院教授で、経済動向に関するコメンテイターとして内外メディアに執筆や出演
※AERA 2022年10月3日号