浜矩子/経済学者、同志社大学大学院教授
浜矩子/経済学者、同志社大学大学院教授
この記事の写真をすべて見る

 経済学者で同志社大学大学院教授の浜矩子さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、経済学的視点で切り込みます。

*  *  *

 日本銀行が何とも難しい問題に直面する状況に追い込まれている。

 その問題とは、「介入の介は厄介の介」問題である。

 円安の進行に歯止めがかからない。150円の大台も見え隠れし始めている。だが、異次元緩和の金融政策を遂行し続ける日銀には、米国の利上げに追随して、円安の要因である日米金利格差の拡大を阻止するという道が閉ざされている。もはや、為替市場に出動して円買い介入を展開するしかない。そのための準備が進められている模様だ。だが、この介入の介が厄介の介なのである。

 なぜか。理由は二つある。二つの恐れだ。

 第一の恐れは、米国の金利上昇問題である。円買い介入のためにはドル資金が必要だ。ドルを売って円を買うのである。円買いのためのドル資金には外貨準備を使う。ただ、ドル準備のかなりの部分は米国債だ。まずは、これを売って現金化しなければならない。ところが、これをやると、米国金利に上昇圧力がかかる。すると、日米金利差がさらに広がる。だから、さらに円安が進行する。何のために介入したのかわからない。

 第二の恐れは、日本の金利上昇問題だ。円買い介入は、民間銀行が日銀に開設している当座預金から円を吸収する形で行われる。民間金融機関が吸収された分の円を補充したければ、彼らは短期金融市場で円資金を調達する。すると、日本の短期金利に上昇圧力がかかる。

次のページ