■帰り道に口ずさめるような曲作りを

──舞台の楽曲の書き下ろしは初挑戦でしたが、何か意識したことは?

 2、3時間しかない舞台を観た人の心にどこまで残る曲にできるか、ですね。なんとなーく帰り道に鼻歌を口ずさんで、「あ、今観た舞台のテーマ曲だ、いい曲だな」って一瞬でも思い出してもらえるぐらいのものを作ろうって。キャッチーな詞とかメロディーを考えたり、サビで同じフレーズを繰り返したり、いろいろ工夫しました。

 ただ、滝沢くんからは「10代の初恋みたいなものを意識して」っていう直しは入りましたね。まだ台本がなかったので僕のなかに違和感はなかったんですけど、作品のゴールが見えている滝沢くんからしたら、ちょっとませた歌詞だったんです。

 普段、曲を作るなかで、作詞家なら「好きだよ」じゃない言い方で好きって伝えなきゃみたいな、自分だから書けるものに固執しすぎてて。もちろんその引き出しは持っとくべきだけど、今回の作品のためにはそぎ落とす作業をしました。「色あせないなんちゃら……」っていう詞を「忘れたくない」に変換するみたいな。

──自分らしい表現とのギャップに悩むことは?

 僕、詞を2パターンで悩んだら、両方出しちゃうんです。一つは京本大我色が強い歌詞。もう一つはセリフに沿った無難な歌詞。要は自我があるほうと、作詞家として発注に応えたものっていう。自我のほうはだいたい通んないですね(笑)。「いいと思うけど攻めすぎかも」って。まあ、選ばれたら面白いかなっていうちょっとした望みはあるけど、僕はどっちでもいいんです。選べないから二つ出しているので。

(構成/本誌・大谷百合絵)

週刊朝日  2022年8月12日号

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