イラスト/ウノ・カマキリ
イラスト/ウノ・カマキリ

 森ら幹部はメンバーたちに、体の髄から“私”をなくし、心の底から“私”をなくす、これが共産主義化であり、それができない人間は日和見主義であるとして、そう疑われたメンバーを次から次へと総括と称して殴り殺した。

 植垣は、総括しなければ自分が総括される、だからやらざるを得なかったのだと語った。

 こうした状況が続けば、最後の一人になるまで総括なる殺人が行われることになったのではないか。

 だが、警察が山岳ベースの存在をつかんだことを察知して、彼らは逃げざるを得なくなり、結局、浅間山荘で逮捕されたのである。

 そして、連合赤軍事件が残虐極まりない同志リンチ事件として報じられると、全共闘は解体、全国の大学で行われていた学生運動は消滅した。そのうち、学生たちが政治について議論することさえ、タブーのようになってしまった。

 10年ばかり前、スイスから来日して芸能界で活躍していた春香クリスティーンさんが、「スイスやイギリス、ドイツなどでは、学生が集まると政治論議で盛り上がるが、日本では学生たちがまったく政治論議をしない。なぜなのですか」と私に言ったことがある。

 政治論議などすると就職に差し支えるとして、タブーのようになっているのだろう。選挙では若い世代の多くが棄権している。将来展望が見えないこともあるだろう。しかし、若者がもっと政治を語ってもいい、と考えている。

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数

週刊朝日  2022年1月28日号

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