「(プーチン)政権内では2012年の民主化運動の大弾圧以降、対欧米協調を志向するやや穏健な勢力が影響力を失い、(中略)旧KGB(ソ連国家保安委員会)出身の『チェキスト』と総称される強硬派が完全に主導権を握った。(中略)思考の根底にあるのは、現在の国際秩序の基本となっている欧米を中心とするリベラルな価値観こそが、ロシアの精神的な基盤を破壊するという危機感で、その裏返しとしての攻撃性だ。欧米のリベラルな民主主義に対して『ロシアの伝統的、精神的価値観』の優位性をことあるごとに主張するイデオロギーは、昨年全面改訂されたロシアで最も重要な戦略文書『安全保障戦略』にも明記された」
つまり、プーチンは過去にとらわれ、ロシア帝国復活を夢見ているわけだ。そのための犠牲者などを顧みず。
独裁政治の怖いところは、トップの人間がまともであるかないか、その判断をいつの間にか周りが下せなくなることだろう。ロシアでプーチンに意見をいえる人がいないなら、世界中から間違っていると声を上げるしかない。
室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中
※週刊朝日 2022年3月18日号