思考停止が最も危険

「この時期、ロシアは中国との国境問題も未解決で強い二国間関係が持てず、グローバルでも地域でも多国間枠組みに入れていなかった。いまはインドと中国がかろうじてロシアとの関係を重視していますし、CSTOや、中国とロシアが主導してインドなども加わる地域協力組織『上海協力機構(SCO)』など、イニシアチブを取れる多国間枠組みもある程度機能しています。2014年のクリミア併合後に行われた経済制裁よりは事態は厳しいですが、1990年代ほどの孤立状態はない、と思います」(同)

 この先、ロシアとはどうつきあうべきか。

 加藤さんは言う。

「あらゆる面でロシアの締め出しが進んでいますが、経済制裁が、制裁を科した側にも反作用があるように、外交面でも『とにかくロシアを切り離せ』とした結果、民主主義諸国に何らかのネガティブな影響はあり得ます。完全にロシアを見えなくしろといった思考停止に陥るのがいちばん危険です。『プーチン後』を見据え、国際社会にロシアを戻す何らかの道を考える。そんな先を見据えた努力と議論が今こそ必要だと思います」

(編集部・小長光哲郎)

AERA 2022年3月28日号より抜粋

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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