室井佑月・作家
室井佑月・作家
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 作家・室井佑月氏は、ロシアによるウクライナ侵攻で多くの命が奪われている惨状に心を痛める。

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 3月20日、TBSのニュースで、

「ロシアによる侵攻が続くウクライナでは、子どもの犠牲も増え続けています。地元当局は、これまでに死亡した子どもが少なくとも112人にのぼると発表しました。広場にならべられた子どもの乗っていないベビーカー。ウクライナ西部のリビウでは、ロシア軍の侵攻で亡くなった子どもの人数を示す100台以上の空のベビーカーが並べられ、子どもが犠牲になっていることへの抗議が行われました」

 抗議のベビーカーの映像を見た。切ない……。

 その3日前の3月17日には「CNN.co.jp」の「ロシア軍、数百人避難のマリウポリの劇場爆撃 地面に『子ども』の文字」というニュースで、

「数百人が避難していた市中心部の劇場が16日、爆撃を受けた。死傷者の数は不明。同市は数週間にわたりロシア軍による包囲が続いている。(中略)建物には市民数百人が避難し、『飛行機が建物に爆弾を落とした』としている。(中略)衛星写真によれば、建物の前後の地面にはロシア語で『子ども』の文字が描かれていた」

 として、建物の敷地にロシア語で「子どもたち」と書かれた画像を見た。恐ろしくなった。

 強く、思う。戦争って結局、こういうことだよね、と。

 過去の戦争について、仕方なかったとする人や、必死でそれが行われねばならなかった理由について話をする人がいる。

 そういう人たちは、戦争によって無残に失われる命に対し、なんとも思わないのだろうか。それも仕方なかった、といい、その理由を話せるんだろうか。自分の子どもの前でも、おなじ意見をいえるだろうか。

 そうそう、3月16日、ウクライナのゼレンスキー大統領が、アメリカの連邦議会でオンライン演説を行った。それは「アメリカのみなさま」と何度も訴え、民主主義を守るために今こそ立ち上がってくれという、アメリカの人々の気持ちを鼓舞するような力強いものであった。が、その演説の中に、9.11のことと共に、真珠湾攻撃のことも出てきて、それを「思い出せ」と訴えるゼレンスキー氏ってどうなの?という声が日本の一部の人々から上がっている。

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