比較的古いスティンガーミサイルや対戦車ミサイルを提供するくらいなら、なぜ30年前のロシア製航空機を提供しないのでしょう。ソ連時代にそれを飛ばす訓練を受けてきたパイロットがウクライナにいるにもかかわらずです。
一方で、プーチンはキーウ付近の北部戦線で明らかに苦戦はしています。
これは、ロシアの戦略的な失敗です。初期には手薄な軍隊を使って、多くの目標を攻撃していました。「集中攻撃」という古くからの軍事的ドクトリンに照らして、間違いです。巨大な武力を集中させて、限られた数の目標を攻撃し、敵を圧倒するのが原則です。
だから、プーチンは現在、ウクライナ南部と東部に集中する立て直しにかかっている。NATOは今まさに、ウクライナに最適な武器や砲弾を、ロシアが再起動する前に提供できるかどうかの競争をしているのです。
プーチンの願いはウクライナ全体を制覇することであるのは間違いありません。でも、それは人的・物質的資源が最小限で終わればの話です。それが今のところ実現できていません。
私の考えでは、彼は14年にクリミアを占領したように、ウクライナ内で他の大きな取り分を得て、次の機会を待つという目標に切り替えていると思います。
肝心なのは、それはプーチン1人だけの願いではありません。ロシア国民の目標が、ソ連、あるいはロシア帝国の一部を再現することなのです。そうやって現状のロシア領土の外堀を固めていくのです。
(構成/ジャーナリスト・津山恵子=ニューヨーク)
※AERA 2022年4月25日号より抜粋