GMOクリック証券取締役の谷口幸博(たにぐち・ゆきひろ)さん。1982年に三洋証券、1998年に丸三証券、2005年より現職。株式市場、為替市場とともに40年間、歩んできた大ベテラン(撮影/写真部・加藤夏子)
GMOクリック証券取締役の谷口幸博(たにぐち・ゆきひろ)さん。1982年に三洋証券、1998年に丸三証券、2005年より現職。株式市場、為替市場とともに40年間、歩んできた大ベテラン(撮影/写真部・加藤夏子)

 ここでリーマン・ショックが起こった2008年の1月から2021年12月末までの14年間、毎月1万円をS&P500に連動する投信につみたて投資をしたときのシミュレーションを行った。

「投資元本」とは財布から出したお金のこと。14年間で168万円だ。そして「資産額」は、財布から出したお金と投信自体が増えた分(または減った分)を合わせたもの。リーマン・ショック発生から3年も経つと、投資元本より資産額のほうが上回った。

 この期間を振り返ると、リーマン・ショックで始まり、2015年8月に中国人民元切り下げによるチャイナ・ショック、2020年3月には新型コロナウイルス感染症拡大によるコロナ・ショックに見舞われている。

 しかし14年に及ぶ毎月1万円のつみたてで、投資元本168万円は2021年末に657万円、つまり約4倍にまで増えた。

 下げ相場に突入した2022年の数カ月は、長期投資において「ある一時期」でしかない。

「短期的な下げ局面だけをクローズアップした株価チャートを見ると、ひどい状態に見えます。ただ、数カ月の下落は14年間のつみたて期間から見れば『ごくごく短期間の小さな下げ局面』にすぎません。長期投資は10年、20年という長いスパンで行うもの。短期的な下げに惑わされて全体を見失わないようにしましょう」

生活費を預金で準備

 では、60歳の定年退職の際にリーマン・ショックのような大暴落で大切なお金が半分になったらどうすべきなのか。

 答えはやはり、「3年ほど待つ」だ。リーマン・ショック後のS&P500は高値から52.6%の暴落を5年5カ月で取り戻している。

 最近は定年退職後も再雇用などで働く人が増えた。下落で目減りした老後資産を補てんすべく、働くのもいい。だが、できれば働きたくない人も多いだろう。

「もう働く気がない、もしくは働き口が見つからないことが心配なら、60歳までに運用資産とは別に、最低3年分の生活費を現預金で準備しておくのはどうでしょう」

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取り崩しにも「準備期間」が必要