AERA 2022年8月1日号より
AERA 2022年8月1日号より

「1960年代の高度経済成長期以降、正社員で終身雇用のお父さんが一生懸命に働けば家族全員が何とか暮らせていた。いわば『家族主義』で何とかなった時代、国の社会保障負担は極めて少ない部分で済んでいた。けれども、そんな家族主義は実質、2000年以降機能していません。そこを転換するのが安倍元首相をはじめとする政治家らの仕事だったのに、とは思います」

 日本社会の「家族主義」という落とし穴について、社会学者の土井隆義・筑波大学教授もこう話す。

「『自助、共助、公助』が象徴的ですが、自己責任主義が進み、共助の狭い部分である家族にも強さを求める傾向が確かにあると思います。こども庁が反対意見を経て『こども家庭庁』になった背景にも、家族という存在への過剰な依存があるでしょう。家族に責任を押しつけるから、その中でうまくいかなくなったときに逃げ場がない。そんな構図は今回の事件にも見受けられると思います」

(編集部・小長光哲郎)

AERA 2022年8月1日号より抜粋

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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