今年もいろんな雑誌が休刊したけど、ぼくにとって一番ショックだったのは「アサヒカメラ」だった。オリンパスOM−1を買った高校1年生のときから毎号、購入or立ち読みしてきた写真雑誌だった。
赤城耕一『フィルムカメラ放蕩記』は、同誌の人気連載に書き下ろしコラム・エッセイを加えたもの。赤城は2000年から休刊まで20年ものあいだ、愛用のフィルムカメラについて書いてきた。この20年はカメラがフィルムからデジタルに変わっていく激動の時代だった。でもその流れに抗うように、赤城はフィルムカメラについて書き続けてきた。
よくこんなに書くことがあるものだと驚くと同時に、よくこんなにもたくさんの種類のカメラが世に出たものだと呆れる。もっとも、ぼくもOM−1以降、キヤノン、ニコン、コンタックスとさまざまなメーカーのフィルムカメラを使ってきた。たぶん「アサヒカメラ」読者、赤城ファンの平均像だと思う。
カメラマニア向けコラムゆえ、専門用語がたくさん出てくる。「これって、どういう意味だろう?」と調べながら読むのが、これまた楽しい。最近の本は注などで親切すぎる。過剰な親切は自分で調べる喜びを奪っているのではないか。
取り上げられているカメラは連載当時、新発売のものではなく、すでにクラシックとなっていたものが多い。ライカやローライもあるが、ほとんどは国産。海外の模倣をしながらも独自性を出そうと奮闘し、やがて世界でもトップレベルのカメラをつくっていく、その軌跡が本書からも読み取れる。
読んでいるうちに、またカメラが欲しくなってきた。
※週刊朝日 2020年12月25日号