20日、86歳の誕生日を迎えられた上皇后・美智子さま。皇太子妃、皇后時代には、装いを通じて相手への敬意や親愛といったメッセージを表現なさることがありました。オートモード平田の石田欧子さんが監修した『美智子さまのお帽子』(小社刊)から一部抜粋して、愛用の帽子とそこに込められたメッセージを振り返ります。
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あるとき、美智子さまは、おそばの方に、楽しそうにこう話されたそうです。
「帽子にお花がついていると、小さな子どもが触ってくるのよ」
1959年4月10日。「世紀のご成婚」が執り行われ、初の民間出身の皇太子妃が誕生しました。
優雅なクロッシュやターバンのように頭を覆うボネ。まるで外国映画のヒロインのようなプリンセスを、日本女性は憧れをもって見つめてきました。
それから60年の歳月のなかで、皇后さまの「お帽子」は変化していくのです。
ときには訪問先へのメッセージを含み、日本の伝統文化を相手に伝え、そして国民と心を通わせる役目を果たすこともあります。
■藤
春の園遊会では、まさに見頃を迎える藤の花の帽子とスーツをお召しの皇后さま。中サイズのプラトー形の帽子に茎と葉を織り交ぜて細長くあしらい、藤棚から花が枝垂れるような美しいデザイン。(2003年4月)
■山葵
2005年3月に発生した福岡県西方沖地震の復興視察。玄界島から非難した住民が暮らす福岡市の仮設住宅も訪れた。皇后さまがお召しのスーツと帽子のリボンは、白と淡いベージュを基調として優しい色合い。白く小さい、帽子の飾り花は山葵の花がモチーフ。(2007年10月)
■花水木
カナダ・ブリティッシュコロンビア州を訪問。美智子さまの帽子には、州花である花水木(ドッグウッド)があしらわれている。(2009年7月)
■のじぎく
のじぎく兵庫国体に合わせて、帽子とコサージュに野路菊をあしらい、ご当地を気遣う装いの美智子さま。(2006年9月)
■芭蕉布
撃沈された学童疎開船「対馬丸」の犠牲者を祀る慰霊碑「小桜の塔」や対馬丸記念館を訪れた両陛下。美智子さまの帽子とスーツは、沖縄の伝統織物である芭蕉布を取り入れて仕立てたもの。美智子さまのお手持ちの布であったという。(2014年6月)
■ぼかし染め
ポーランドを訪問。皇后さまの帽子を飾る薔薇は、ちりめんの布でつくられている。ぼかし染めの服に調和するように、花びらの布一枚一枚に手作業で染料をのせ、コテで花を立体的につくりながら繊細なぼかしを表現した。(2002年7月)
(編集/週刊朝日編集部・永井貴子)
※写真集『美智子さまのお帽子』より抜粋