そう言って豪快に笑ってから、スッと声のトーンを落とし、「橋田先生も、いろんなドラマを観てらしたなぁ」と続けた。
「『脚本を書かなくてもいい時期はドラマを観る時間があるのが嬉しい』と言って、『相棒』とか、『はぐれ刑事』シリーズなんかをよく観てた。『そんなに好きなら、サスペンスとか刑事ものを書けばいいのに。視聴率とれるんだから』なんて軽口をたたき合って(笑)。橋田先生の健康を気遣うつもりでいろいろ言うと、『わかんないよ、あんたが先に死ぬかもしれない』なんて返された。『90の私が書いているんだから、70のガキは仕事しろ!』って(笑)。橋田先生が『笑っていいとも!』に出演していたのは、今の私ぐらいの年齢なのよね。この年で、毎週一人で熱海から新宿まで通ってたんだから」
初めての朗読劇は、「挑戦」だという。宮川彬良さんの音楽も入る、一筋縄ではいかない朗読劇。「未知の世界だから楽しいじゃない」と微笑んだ。
「年取るっていうのも未知の世界だけどさ、人生の先輩たちが、“年を取るのも悪くない”と言っていたそのココロは、私は、“忘れられる”ってことにあるような気がする。ウチの夫だって、自分の過去の過ちを『そんなことあったっけ』なんて忘れられるようになるんだから」
(菊地陽子、構成/長沢明)
※週刊朝日 2022年7月8日号より抜粋
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