■停電や断水の中、祭りの準備を進める
色鮮やかなサリー姿が、千葉中央公園を彩る。まるで花が咲いたようだ。カレーやビリヤニ(炊き込みご飯)のブースに、異国の留学生たちが並ぶ。タピオカ店まであって、サリー女子が楽しげに味わっている姿もある。やがて軽快なネパール音楽が流れだすと、次々に広場に飛び出し踊りはじめる。この日、10月8日はネパール最大のお祭り、「ダサイン」なのだ。
「無事に開催できて本当に良かった。いまはほっとして、いい気分です」
と笑うのは、ダサインを主催した千葉モードビジネス専門学校に留学し、国際ビジネスを学ぶアチャルヤ・スンダルさん。生徒会長だ。生徒会の仲間とこのイベントを準備してきたが、9月9日に上陸し千葉県で猛威を振るった台風15号が、留学生たちも襲った。やはり生徒会のひとりでネパール人のタマン・サンティさんは、
「停電と断水が2日間、続いたんです。スマホの充電も切れちゃって。近所のスーパーは閉まったので、空いている店まで1時間歩いて行きました」と言う。
同じく生徒会のネパール人レグミ・ウパチャヤ・アシシュさんも被災した。
「コンビニで働いているんですが、お店も大きな損害を受けました。休みになってしまったので働けず、給料も少なくて困りました」
しかし彼らの通う学校は被害がなく停電もしなかったので、休校にはなったが校舎を避難所として地域に開放。外国人の生徒たちも学校を頼り、水をもらったりトイレを借りたりしながらダサインの準備を進めた。
■専門学校がネパール人生徒のために主催
それだけダサインに熱意を傾けたのは、このお祭りがネパール人にとっては年に一度の大きなイベントだからだ。ヒンドゥー教の女神ドゥルガーが悪魔に勝利したという伝説にちなむものだが、このときは家族親戚が集まってお祝いをする。ネパールは中東や東南アジアなど世界各地に出稼ぎ労働者や留学生を送り出しているが、彼らもダサインには帰郷し、家族と久しぶりの再会を喜ぶのだ。