屋良朝博さん(沖縄市の事務所で)
屋良朝博さん(沖縄市の事務所で)

「そもそも新基地建設が辺野古でなくてはならない理由を政府は明確に示していません」

 一度は議論された普天間基地の県外移設も結局は「移設先となる本土の理解を得られない」という見解によって潰されてきた。中国脅威論や地理的優位性が、それを補強する。「そもそも」と、屋良さんは続ける。

「移設すべき普天間基地にはどのような役割があるのか。それを理解すれば新基地を建設する必要などないのです」

 屋良さんが指摘する普天間基地の役割は以下の三つだ。(1)空中給油機を飛ばすこと(2)有事の際、米本土から派遣される来援機を収容すること(3)地上部隊との連携訓練など。

 (1)はすでに岩国基地へ移転済み。(2)も県外自衛隊基地へ移転が予定されている。となると残るは(3)のみだが……。

「訓練だけであれば県外のほかの地域でも十分に可能。県内の別のヘリポートで運用もできる」

 つまり、すでに機能縮小が進む普天間基地だからこそ、新たに基地を造らなくとも十分に他でカバー可能というわけだ。

「沖縄に駐留している米軍のほとんどが海兵隊です。海兵隊はローテーション配備で常に沖縄にいるわけではない。移動のための艦艇は長崎県佐世保にあります。即、有事に対応できるわけでもないし、だいたい『有事』と簡単に言うが、仮に戦争となれば沖縄の海兵隊だけで対応できるわけがない。本土も高みの見物などできるわけもなく、いや応なく東京も巻き込まれるのです。沖縄のハードパワーで日本を守ることができると考えることじたいが幻想です」

 だからこそ普天間の代替施設が本当に必要というのであれば、全国の自治体が等しく候補地となり、国民的議論で決めなければならないのではないか。それを放棄するのは単純に面積の問題ではなく、「差別」があるからだと言わざるを得ない。そして、それを正当化、あるいは理屈を補強するためにデマが用いられる。

 これまで2回にわたって報じてきたが、「ひろゆき騒動」以降、ネット上ではまたもや沖縄に関するデマが溢れている。

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