経済産業省が3月に公表した上場企業を対象に行った調査(874社回答)によると、78%の企業で相談役・顧問制度があり、62%の企業で現に在任中という結果が出た。そもそも相談役・顧問は日本特有の慣行だ。株主総会の議決を経ずに選任することができ、経営責任を負わないにもかかわらず、経営に影響力を及ぼす恐れがあり、外国人投資家などからの批判が強まっていた。

 そこで政府は来年にも、相談役や顧問の実態を開示させる新制度を導入する方針だ。すでに日清紡ホールディングスなど相談役・顧問制度の廃止に踏み切った企業も出てきた。BTMUも制度を見直す方向で検討に入った。

 全ての頭取経験者に終身で、「個室」「車」「秘書」の3点セットを与えるのは過剰な待遇であり、有力OBによる院政が敷かれて、ガバナンスに支障を来すのは必然の流れといえる。あるBTMU役員は「年功序列のヒエラルキーが死ぬまで続く異常な世界」とあきれる。

 御三家のほころびは三菱ブランドを毀損し、グループ全体に波及する。厳密なガバナンスがあってこその「組織の三菱」であり、立て直しが急務だ。

●「組織の三菱」を体現してきた御三家の集団指導体制に転機

 三菱重工業、三菱東京UFJ銀行、三菱商事の御三家を中核とした、組織的な運営が三菱グループの強みだが、その集団指導体制が大きな転機を迎えています。

 図の通り、「組織の三菱」と称される三菱は、「御三家」「世話人会」「金曜会」といった暗黙のグループ内序列に基づき、御三家を含む世話人会企業が重要事項を事前協議するなど、組織だった運営が行われてきました。

 しかし、5月末に開示された三菱UFJ信託銀行の資料で、従来の企業集団の常識では考えられない事実が明らかになりました。

 三菱自動車が昨年末に開いた臨時株主総会で、同じ三菱グループの「身内」であるはずの三菱UFJ信託が益子修社長ら5人の取締役選任に反対していたのです。グループ内の結束よりも、資産運用を委託してくれた投資家の利益を追求する「投資の論理」の重視を鮮明にした格好です。

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