「値段が高くても消費者が買っていることも、高止まりに結びついていると言えるでしょう。高騰しているにもかかわらず、足元の購入量は2024年の秋以降で過去最高水準に達しています」(同)
もしも、手元に2〜3カ月は底を尽きることがない量のストックがあるなら、たとえ先行きに対して不安があっても、さらにコメを買い増すことはしばらく控えたほうが賢明かもしれない。コメを売る側としては、高値でも買ってくれる人が存在する限り、むやみに値下げを行うことはありえない。逆に消費者の間で買い控えの動きが顕在化してくれば、売る側の姿勢にも変化が生じる可能性がある。
繰り広げられるコメ争奪戦
「売る側としてもコメの消費量が伸びるほど、先々でコメ不足に陥ることへの警戒から、安く大量に販売することを躊躇せざるをえない事情もあります」(同)
ただ、主食であるコメの価格は他の農産物とは違い、価格の決定方式が特殊で需要と供給のバランス関係が直ちに反映されにくいのも確かだ。スーパーなどの小売店における店頭価格は仕入れ値や需要に左右され、その点は他の農産物と変わらない。これに対し、小売店の仕入れ値(卸売価格)は、全国農業協同組合連合会(JA全農)を筆頭とするコメの集荷業者や卸売業者と生産者(コメ農家)との直接交渉による「相対取引」で決まる。
市場を通じて売り手と買い手がオープンなやりとりを行うケースとは異なり、個別交渉の「相対取引」ではどのような条件でやりとりが行われているのかが不透明なのである。さらにややこしいのは、コメの取引には他にも「概算金」と呼ばれるものが関わってくることだ。「概算金」とは、JA全農が収穫前の段階で農家に支払う一時金だ。その年におけるコメの生育状況や販売の見通しに基づいて取引価格を推定し、その金額で一時金を支払うという取り決めになっている。
国内で生産されたコメの多くはJA全農が集荷しており、これまで圧倒的なシェアを獲得してきた。ところが、「令和の米騒動」の前後からコメの集荷における勢力地図に大きな変化が生じ、そのことが価格高騰に拍車をかけているという。高値にため息をつく私たち消費者が知らない場所で、コメ争奪戦が繰り広げられている。
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