佐藤愛子のエッセイ集『九十歳。何がめでたい』の魅力は、このタイトルに集約されている。次のような文章を読むと、そう思う。 〈ああ、長生きするということは、全く面倒(めんど)くさいことだ。耳だけじゃない。眼も悪い。始終、涙が滲(にじ)み出て目尻目頭のジクジクが止らない。膝からは時々力が脱けてよろめく。脳ミソも減ってきた。そのうち歯も抜けるだろう。なのに私はまだ生きている〉 病院の待合室へ行くま…

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