4歳の娘を持つ映画監督デイモン・ガモーは悪化する地球環境を懸念していた。彼は現実的な解決法を探すべく、専門家を訪ねて世界11カ国を巡る旅に出る。娘が大人になる2040年にはどんな未来が訪れるだろうか──。未来をフィクション仕立てで見せるなどユニークなドキュメンタリー「2040 地球再生のビジョン」。脚本も務めたデイモン・ガモー監督に本作の見どころを聞いた。
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エコロジーや環境に関する作品は、どうしてもネガティブで悲観的なものが多いですよね。このままでは若者たちが希望を失って、本当にディストピアな未来が実現してしまうかもしれない。そうならないためにも、いま確実に存在するヒントから明るい未来を想像し、ポジティブなメッセージを送る映画をつくろうと思いました。
お説教っぽくしないために2040年の未来の映像をつくったり、専門家をミニサイズにしたりワクワクできるエンタメにしようと思いました。なかには自分がミニサイズになることを知らなかった方もいらっしゃいますが(笑)。
本作に登場する試みは全てが実現可能なものです。例えばバングラデシュの「マイクログリッド」。自家用の太陽光発電システムをつなぎ、各家庭で電気を取引します。固定電話をとばして携帯電話が普及したようなものです。女性のエンパワーメントが地球資源や環境にも良く影響するという識者の見解には私もハッとさせられました。しかし集中したインフラのほうが好ましいと考える権力者や、変化を好まない政治がそれらを邪魔する現実もあります。
変化を起こすことは容易ではないでしょう。短期的には混乱を来すかもしれない。しかし中期的に見れば「今までのシステムではダメだ、あまりにもリスクが多すぎる」と気づく人も増えるはずです。実際、変化は確実に起きています。一極集中だったメディアがネットやSNSに移行したのもそのひとつ。11歳になった私の娘も本作で環境への志が高くなったようです。
本作のウェブサイトでは、2040年の未来を現実にするために出来ることを考えるキャンペーンをしています。自分ができることをみんながやれば世界は変わる。目を覚まして行動を起こすときです。
(取材/文・中村千晶)
※AERA 2025年1月13日号