スタイリッシュな髪色に合わせのは、やわらかな色と柄行の友禅の着物。
淡い黄緑に似た「裏葉柳(うらはやなぎ)」のやさしい地色。大小の色紙がふわりと舞い上がる絵柄には、糊をおいて金箔をのせる「摺箔(すりはく)」の技法が用いられている。
色紙に絡むように、牡丹や菊が友禅染と手刺繍で施され、肩から胸にかけては、風にそよぐ薄紫色の春蘭の花弁と葉があしらわれている。白い菊を主役に朱色が効いた帯と白の帯揚げが品よく調和する。
流行と伝統が美しく調和した瑶子さまの和装は、よくお似合いだった。
着物業界の関係者は、こう話す。
「お姉さまの彬子さまは、日本文化に造詣が深くむろん着物にもお詳しい。瑶子さまはお姉さまに、相談されながら選ばれたのではないでしょうか」
彬子さまの訪問着も、卵の殻のようなごく淡い黄色が混じる「鳥の子」色の地に、大小の紅葉が配された柄行だ。
彬子さまのみごとな帯留め
昭和の時代から皇室に着物をつくり、納めてきた「染の聚楽」(京都市)代表の高橋泰三さんが、「特に素晴らしいお品」と話すのは、彬子さまの帯留めだ。
「緑の地に金や白の濃淡で織りだされた正倉院華文の帯。そこに合わせていらっしゃるのが、扇型のべっ甲の帯留めです」
べっ甲は、インド洋の海域に生息するタイマイというウミガメの甲羅から取れる天然素材。ワシントン条約で国際取引が禁止されているため、和装小物としても希少な品だ。
「このようなみごとな細工には、なかなか出会えません。宮家の方々から受け継いだお品かもしれませんね」
彬子さまの母、信子さまの帯からは、組紐とそれにつながる翡翠のような玉飾りがのぞく。
「おそらく懐中時計ではないでしょうか。和装の場合、腕時計のように着物の袖からのぞく姿は、美しさにかけます。帯に懐中時計を挟むのが、和装の小物づかいです」