荒木千衣氏と後藤宗明氏の対談は、時に笑いを交えながら続いた。(撮影すべて・上田泰世/朝日新聞出版写真映像部)
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「これからも必要とされる働き方を手に入れる」ための一番の解決策は「リスキリング(reskilling)」だ。一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表理事で、『中高年リスキリング』(朝日新書)の著者である後藤宗明氏は、そう述べる。出版社に勤めながら、チョコレート探究家・ライターになった荒木千衣氏と対談した後藤氏は、「勤務している会社を退職して新しい環境に身を置くことがリスキリングではない」ともいう。彼女を動かすものは、いったい何か……。

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仕事だけの人生で死にたくない

後藤:チョコレートの話をしましょう。何でも友達の誕生日会がきっかけだったとか。

荒木:2016年5月、友達の誕生日会で「来年、僕はこれをやります」と宣言した男性がいたんです。それを聞いて、私もこれを機に何かやろうという勢いで始めたのが、「チョコレートをひたすら1年間食べてみる」というチョコレートの活動です。

『働きマン』(安野モヨコ著:講談社)という漫画に、出版社に勤める編集者・松方弘子が「あたしは仕事したなーって思って死にたい」というセリフがあるんです。

 読んだときに私、強烈な違和感があって、「仕事があるのはありがたいけれど、仕事だけの人生で死にたくない」って思いました。

 仕事があるからと自分の興味や好奇心を後回しにしないことも、人生を楽しむためには必要だと強く感じたのです。休職したことや2011年の東日本大震災で「死」を意識したことが根底にあるのかもしれません。

後藤:チョコレートを選んだ理由はあるのでしょうか。

荒木:どうやったら1年間、仕事をしながら続けられるか。1000種類ぐらい体験しないと、何も見えてこないのではないかと周りからのアドバイスがありました。ということで、1日3種類ぐらい食べられるものを探したんですね。

チョコレート探究家として「喋る、話すスキル」が身についたと話す、荒木氏

 時期や季節を問わない、残しても保存できる、世界中にある、コンビニやスーパー、百貨店で手に入る、専門店などもある。結果、チョコレートになりました。

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チョコレート探究家として喋る、話すスキルがついた