BTSのSUGAさんの地元に造られた「シュガ街」の一画(撮影=ノ・ミンハ)
この記事の写真をすべて見る

 韓国の人気音楽グループ「BTS」のメンバーSUGAさん(31)が今月6日に飲酒運転したことが明らかとなり、その後も彼をめぐる議論が沸騰している。事故後、彼や事務所が発表した内容が虚偽の疑いが濃厚となったためだ。彼のグループからの脱退を求める声や行動が日増しに強くなっており、ファンからも同様の意見が出ている。ファンが多く訪れる彼の地元ですら、かばう声が聞こえてこない。こじれるとBTSの他のメンバーや事務所にも迷惑をかける恐れがあるという雰囲気を強く感じる。現地の様子をリポートする。

【写真】米ホワイトハウスでメンバーと写るSUGAさんはこちら

 筆者はソウルからKTX(韓国の新幹線)で1時間50分ほどの大邱(テグ)市に向かった。めざしたのは同市の地下鉄・明徳(ミョンドク)駅。駅の近くにある「ムルベギ通り」には、SUGAさんの壁画が随所に描かれているからだ。

「SUGAとBTSは好きだが擁護できない」

 SUGAさんは大邱出身。ムルベギ通りには彼の過去の音楽作業室があったという。BTSの成功を契機に、大邱ではこの通りを「SUGA街」として仕立てあげたのだ。地元出身の色を全面に出したこの通りに世界のBTSファンが反応した。ムルベギ通りは海外から来たファンの「BTS詣」のコースになった。

 だが、今回のSUGAさんの飲酒運転事件で。大邱のなかでも「SUGA街」をなくし、彼の壁画を直ちに消すべきだ、という意見が出てきた。

 大邱市民はどう思っているのだろうか。ムルベギ通り近くの食堂の女性店員に、SUGAさんの名前を出してみた。すると即座に、「飲酒運転した子?」という言葉が返ってきた。SUGAさんのおかげで外国人観光客が多く訪れ、商売もプラスになったはずだが、彼女の口から次に出てきたのは、「飲酒運転犯罪は見逃せないのではないか」という突き放したような言葉だった。

 駅周辺のコンビニの従業員にも聞いてみた。

「SUGAとBTSは好きだが、(飲酒運転は)擁護できない。SUGAの壁画も飲酒運転の容疑者がこの街の出身だということを宣伝するようなもの。そんな必要はないのではないか」

 はじめは筆者が記者であることを警戒し、世論に合った言葉を選んでいるのかと勘ぐった。しかしその後も取材を進めると、どうも違う空気が大邱にも流れていた。SUGAさんはすでに地元でも“お荷物”になっているのだろうか……。

次のページ
事故直後の反応はそこまで厳しいものではなかったが……